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病気のはなし

高血圧の基準値とは?

循環器内科部長 山下 尋史
(緑のひろば 2014年10月号掲載)



最近、こういう質問をよく受けるようになりました。きっかけは、2014年4月に「日本人間ドック学会」が発表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」でした。
この「基準範囲(正常範囲)」によると、収縮期血圧(高い方の値)の上限は147mmHg、拡張期血圧(低い方の値)の上限は94mmHgです。
この発表に対し、高血圧の専門医からなる「日本高血圧学会」が、「高血圧の判定基準は世界共通で、収縮期140mmHg、拡張期90mmHg以上である」と反論し、週刊誌やテレビ番組でも大きく取り上げられて、大きな話題になったのは記憶に新しいことと思います。冒頭の患者さんも、どちらの値を信じていいのか分からなくなって来られたのです。
以下の表に、両学会の血圧正常範囲を整理します。

血圧正常範囲 日本人間ドック学会 日本高血圧学会
収縮期血圧 147mmHg以下 140mmHg未満
拡張期血圧 94mmHg以下 90mmHg未満

「なぜ、血圧の正常範囲が違うのか?」
そして、「どちらが正しいのか?」こういう疑問を持たれた方は多いと思います。
結論から言うと、「日本人間ドック学会」の正常範囲も、「日本高血圧学会」の正常範囲も、それぞれの学会の医師の立場と、対象とする患者さんが違うだけで、どちらも正しいと私は思います。では、「なぜ違うのか」、そして、「血圧が高めと言われたら、どうすればいいのか」、についてお話しします。

先ず、高血圧症は、なぜ治療しなければいけないのでしょうか?
それは、高血圧症の方が適切な治療を受けず、血圧の高い状態が5年、10年、20年と続いていくと、将来、脳梗塞や心筋梗塞などの「動脈硬化による病気」や、血液透析などの腎臓病、大動脈瘤などの血管の病気(これらをまとめて「高血圧合併症」と呼びます)になりやすいからです。これらの病気はいずれも命に関わる重い病気ばかりです。
そして、治療により血圧が下がると、これらの「高血圧合併症」になりにくくなり、これらの病気で亡くなる方が少なくなるのです。もともと血圧が低い人が、これらの「高血圧合併症」になりにくいのは当然としても、もともと血圧の高い患者さんでも、治療により血圧が下がると、これらの「高血圧合併症」になりにくくなります。つまり、血圧はある程度までは(およそ120/80 mmHg位まで)は「低ければ低いほど、高血圧合併症は少なくなり、亡くなる方が少ない」ということになります。
日本人間ドック学会」の正常範囲(基準範囲)は、人間ドックや健康診断を受診された多くの方の中から、「持病がなく、しかも他の血液検査を含めて異常のない方」(「超健康人」と呼びます)の血圧値の平均や分布(値の拡がり)を調べて正常範囲を決めました。従って、この値は「現在健康な人の血圧は、大体この範囲内に入っている」ということを示します。大事なことは、この中には、高血圧症や心臓病、糖尿病の患者さんや、健診で異常のある方々(例えば、肥り気味の方、血液検査で血糖値、コレステロール値、尿酸値、肝機能などに異常のある方)は含まれていません。つまり、「日本人間ドック学会」の正常範囲(147/94 mmHg以下)は、持病や健診における異常値のない「健康な方」に当てはまるものであり、すでに高血圧症、糖尿病、高脂血症などで治療中の患者さんや、すでに脳梗塞や心筋梗塞などの「動脈硬化による病気」になっている患者さんにはあてはまりません。
一方、「日本高血圧学会」の正常範囲(140/90 mmHg未満)は、どのように決められているでしょうか?
それは、世界各国の多くの人々の血圧値と「高血圧合併症」の起きた数を何年間にもわたって調べた地道な研究に基づいています。先に述べたように、この正常範囲より血圧が高い人は、将来「高血圧合併症」を起こしやすく、さらに、血圧の高い人も治療により血圧を下げると、「高血圧合併症」が起きにくくなるということが分かっています。脳梗塞や心筋梗塞などの「動脈硬化による病気」にすでになっている方、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などを合併している方、肥満の方などは、特に「高血圧合併症」になりやすいので、この正常範囲を目標としてしっかりと血圧を下げる治療が必要です。そうすることで、重い「高血圧合併症」で命を落とす方を減らすことができるのです。

要するに、「日本人間ドック学会」が研究対象とするのは、多くが健康な方で占められている「一般健診受診者」であり、一方、「日本高血圧学会」は、すでに色々な病気で医療機関にかかっている「患者さん」を対象とすることが多いために、それぞれの学会が示す血圧正常範囲が異なるのです。
さて、冒頭の「健診で血圧が高いと言われたのですが、本当に治療をした方がいいのでしょうか」とお聞きになった方はどうされたでしょうか?
この方の健診における血圧は、145/92 mmHgでした。これは、「日本高血圧学会」の正常値140/90 mmHgを上回っていますが、「日本人間ドック学会」の正常範囲147/94 mmHgは超えていません。また、持病や健診結果の異常値などもありませんでした。そこで、先ず自宅に自動血圧計(肘で測るものが理想的)を買っていただき、お渡しした血圧手帳に血圧の記録をつけていただくことにしました。同時に、生活習慣にも気をつけていただき、食事の塩分を減らし(減塩)、肥満があれば理想体重に近づけ(減量)、適度な運動(ウォーキングなど)を続けていただくようにお話ししました。1ヶ月後、血圧手帳を持って来られた時には、日々の血圧値に多少のばらつきはありますが、140/90 mmHgよりも低いことがほとんどでした。今後も、生活習慣の注意を続けていただくことにして診察を終えました。


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