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病気のはなし

冬になるとなぜ体が痒くなるの?

皮膚科 日野 治子
(緑のひろば 2011年2月号掲載)


2月といってもまだ春には遠く、北風は吹きすさびます。毎年、秋頃から始まり、さらに寒さと共に皮膚が痒くて寝られない、一旦掻き出すと止まらなくなってしまうなどという方が少なくありません。皮膚が痒いのはつらいものです。

痒みを主訴に来院される方がたくさんおられます。まず、皮膚病変がなくて、痒みのみの場合、皮膚瘙痒(そうよう)症と言います。原因としては、さまざまな状況が考えられます。慢性蕁麻疹もその1つです。皮膚の表面は何もなくて、何らかの機会にちょっとひっかくと赤くみみずばれのようになり、急激に痒くなっていくタイプがあります。蕁麻疹というと、すぐにアレルギーを考えますが、これはアレルギーではなく、気温や体温が上昇すると痒くて、ひっかくという物理的刺激で出るもので、人工蕁麻疹と言います。慢性蕁麻疹には抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬が有効ですが、長期間続ける必要があります。

一方で、気温が下がり、湿度が低くなると発汗や皮脂の分泌が低下し、皮膚の表面が乾燥します。皮膚の乾燥が生じると、不思議なことに痒みを感じる神経の末端が表皮へ進入し、外界からの刺激を敏感に受けやすくなり、痒みを感じる感覚が増します。皮膚の表面に保湿剤などで潤いを与えると、神経末端は真皮へ戻っていきます。この皮脂欠乏による皮膚の痒みは、かつては中高年に起きる現象と言われていましたが、最近では若い年代にも少なくありません。入浴好きで熱い湯に入って垢すりでごしごし表皮の皮脂を洗い流してしまったり、エアコンが行き届き、常に室内が乾燥していたりすると、若い世代にも同様の現象が起きます。特にアトピー性皮膚炎のような皮膚が乾燥している場合は、ことさら痒みが強くなって皮膚炎の状況が悪化することがあります。また、皮膚の乾燥に加え、夜間に布団で温まったり、入浴したり、アルコールを飲み末梢循環がよくなり過ぎると、痒みを感じ、掻き始めてしまいます。

このようなかゆみに対してどうしましょう? 本当は真冬になってこれらの症状がひどくなる前、すなわち秋頃から肌の手入れをしておくことが必要です。入浴したら石鹸を使ってもごしごしこすって洗わないことです。また、皮膚の表面を乾燥しないように、入浴後にボディオイルやクリームなどの保湿剤を塗っておくことです。特に入浴後のまだ体が温かくしっとりしている頃、入浴後10分くらいの、すっかり乾いてしまう前に塗ってしまうことです。さらに木綿の吸水性がよい、チクチクしない衣類を身につけることも必要です。

掻き壊して、びらんが出来たり、滲出液や痂皮がついた状態、すなわち湿疹病変へ進行してしまう場合があります。このような湿疹になってしまったらあきらめて早めに皮膚科へ行くべきでしょう。若い年代の人々がむずむず人ごみの中で体を引っ掻くのはあまり格好のよいものではないし、きれいな足に引っ掻き傷ができているのは感心しません。皮膚科で抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬のかゆみどめを処方してもらう、湿疹の局所的治療として、ステロイド軟膏を外用するなどが必要です。

実はもう一点、時には、背景に何か治療が必要な、重要な疾患が隠れている場合があります。痒いと言ってこられる方々を検査すると、糖尿病、腎臓や肝臓の機能障害、甲状腺機能低下、また若い方では膠原病なども、まれに見出されることがあります。これらに関しては、血液や尿など検査をする必要があります。まず、皮膚科を受診して、皮膚の状態を見てもらいましょう。治療はもちろん、積極的な検査が必要かもしれません。



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