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病気のはなし

高齢者の肺炎球菌ワクチン

呼吸器内科部長 高見 和孝

肺炎は、がん、心臓病に続き、日本人の死因の第3位であり、年間約12万人が肺炎のために亡くなっています。そのうち9割以上の方が、65歳以上の高齢者です。
肺炎球菌は、日常生活でかかる肺炎の中で最も多い頻度の高い原因菌です。肺炎球菌は、鼻や喉に定着している菌で、成人の約5%、小児では約20〜40%が保菌しています。唾液や咳痰を介して主に小児から成人へと伝搬され、免疫力の低下などをきっかけに、気管支炎、肺炎、時には敗血症など重い合併症を起こします。肺炎球菌感染症を発症しやすいのは、免疫機能が未熟な乳幼児(とくに2歳未満)と、65歳以上の高齢者です。加齢とともに免疫機能は低下し、感染症にかかりやすくなります。また、糖尿病、心臓病、腎臓病、呼吸器疾患などの慢性疾患のある方、病気の治療薬により免疫力が低下している方も感染の危険が高くなります。

肺炎球菌の感染を予防するには、手洗い、うがい、マスクの着用といった日常的な予防に加え、肺炎球菌ワクチンの接種による感染予防が非常に重要です。肺炎球菌ワクチンにより、肺炎球菌による肺炎を予防し、重篤化しやすい高齢者肺炎の重症化を防ぐことができます。

現在、成人に使用可能な肺炎球菌ワクチンは2種類あります。2014年10月より65歳以上の高齢者に定期接種(公費助成の対象)可能となった「23価多糖体型ワクチン」(ニューモバックス®NP)と、2014年6月より65歳以上の高齢者に任意接種が可能となった「13価タンパク結合型ワクチン」(プレベナー13®)の2種類です。ともに肺炎球菌に対して予防効果がありますが、公費による助成対象の有無以外に、目的となる肺炎球菌の種類や、効果に違いがあります。肺炎球菌は莢膜(きょうまく)と呼ばれる膜で包まれ、その莢膜の性質により90種類以上に分類されます。このうち肺炎球菌感染症を起こすものは30種類程とされて、ニューモバックス®NPは23種類の菌種に対して、プレベナー13®は13種類の菌種に対して予防効果があります。ニューモバックス®NPは、莢膜の多糖体といわれる部分を人に接種し、細菌に対する抗体を作らせ免疫効果を発揮しますが、経年的に免疫効果が減弱してきます。一方プレベナー13®は、莢膜多糖体に蛋白質を結合させたものを人に接種することにより、記憶免疫と呼ばれる高い免疫効果を期待することができます。この2つのワクチンは作用機序の違いから、2種類を連続接種することで、より高い予防効果が期待され、2014年9月、ACIP(米国予防接種諮問委員会)によりニューモバックス®NPとプレベナー13®の併用が推奨されました。これまでに肺炎球菌ワクチンの接種歴が無い65歳以上の人に対して、プレベナー13®を最初に接種し、その6ヶ月〜4年以内にニューモバックス®NPの接種が推奨されています。既にニューモバックス®NPを接種した人に対しては、1年以上の間を開け、プレベナー13®の接種が推奨されています。ただし両ワクチンの併用に関しては、日本人を対象とした有効性、安全性に関するデータが少なく、今後のデータの蓄積が必要です。

まずは公費助成制度の肺炎球菌ワクチンの定期接種を利用し、肺炎の予防にお役立てください。


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