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病気のはなし

思春期と強迫性障害

精神科 前原 智之
(緑のひろば 2015年5月号掲載)



強迫とは?
 不安障害の一つ、強迫観念と強迫行為という症状に特徴づけられる疾患に、強迫性障害があります。強迫観念とは、反復する持続的な考え、衝動、イメージで、自分でどんなに考えないようにしようとしても、頭の中に「バイキンがついているのではないか」という考え、あるいは「手を洗わなければならない」という衝動、自分の手がバイキンで汚れているイメージなどが浮かんできてしまうものです。
 これらの侵入的な強迫観念を打ち消そうとして、頭の中で数字を数える、ガス栓が閉じていることを確認する、窓の鍵が閉まっていることを確認する、手を洗ったり、お風呂で身体を洗う順番などを決めて儀式化するなどの強迫行為が生じてきます。この疾患の子どもたちは、振り払おうとしても振り払うことが出来ない強迫観念や強迫行為に支配されて毎日の生活を送るようになります。通常は、中学生や高校生であれば家庭や学校の予定表に従って、それを中心に生活は回っています。しかし、強迫性障害の子どもの場合には強迫観念や強迫行為を中心に毎日が展開するようになります。

強迫症状の原因と治療
 強迫症状は多種多様な原因、疾患で起こることが分かってきています。自閉症をはじめとする発達障害や、統合失調症などの精神病性障害といった脳の障害、以下に述べる心の病である強迫性障害など、その原因疾患は多岐に渡ります。ですから、それぞれの疾患、状態像に応じた治療法を選択していく必要があります。脳の障害の要素が強ければ原疾患の専門的な治療やSSRIなどの薬物療法が中心になるでしょうし、心の問題が大きければカウンセリングが中心になります。

強迫性障害と思春期
 ここでは、心の問題が大きい場合についてお話をさせていただきます。思春期には、第二次性徴の発現により大人の身体に成熟していきますが、この時、子どものこころは、身体の革新的な変化はもとより、性ホルモンの高まりによる衝動を内に感じ、また、大人びていく仲間たちとの対人関係の複雑化にさらされることになり、内にも外にも非常に不安定な状態となります。そして、このような不安定な状態をなんとかコントロールして安定させようという試みをするようになります。結局、悪戦苦闘しながら、内的にも外的にも適応していかなければならないのですが、不安定に耐え切れない場合に、せめて清潔や安全だけは完全にコントロールしようとする試みがされるようになり、この試みが強迫症状となって現れる場合があります。

強迫性障害と親子関係
 強迫性障害の経過に影響を与える大きな問題は、強迫症状によって親子関係が歪んでしまうこと、それによって、子どもが大人への発達の過程を歩めなくなってしまうところにあります。10代の前半に、子どもが同性同年代の仲間と親しく交流することは、子どものこころが大人のこころになっていく過程に必要不可欠なものです。強迫症状にとらわれてばかりいれば、同性仲間と親しく情緒交流するという発達課題に取り組むことができなくなってしまいます。
 多くのお母さんは、強迫症状に苦しむわが子をなんとか救ってあげようとして子どもの強迫症状に巻き込まれるようになります。母が子を助けようとする営みは人としてごく自然なものなのですが、本当の問題は強迫症状ではなく、自己イメージの変化や仲間関係の変化に伴う苦悩であるため、お母さんの努力の多くは的外れなものになってしまい徒労に終わってしまいます。ドアノブが汚れているから開けてほしいという子どもに対してドアを開けてあげる、自分の手は汚くないかと聞く息子に汚くないと繰り返し言ってあげる、お母さんがそうしてあげることで自分の思い通りにならない人間関係の不満を、お母さんを思い通りにコントロールすることで代理的に満足させようとします。これによって、子どもは思い通りにならない仲間関係から引きこもり、一向に症状はよくならずに家での生活に安住するようになります。このような場合、お母さんが子どもの強迫症状に付き合わなくなることで、子どもたちは強迫症状に何の力も意味もない事を知り、症状を手放し、本来の問題に取り組むことができるようになります。

ご相談の勧め
 関東中央病院精神科では、思春期に入り、身体やこころの変化といった自己イメージの変化、仲間関係の変化、親子関係の変化に適応できずに、それらをなんとかコントロールしようとして強迫症状にとらわれ、悪戦苦闘することが病態の中心になっている子どもたちの治療や、そのようなお子さんを支えるために悩んでおられる親御さんのご相談に乗っております。是非ご活用ください。


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