本当は怖い(こともある?)膵嚢胞(すいのうほう)
消化器内科 渡邉 健雄
(緑のひろば 2015年3月号掲載)
今回は膵臓のお話です。
健康診断・人間ドックの検査結果を確認されていますか?検査結果の腹部超音波(エコー)のところに、「膵嚢胞」「主膵管拡張」などと書かれていませんか?
“嚢胞”とは内部に液体が溜まっている袋状のもののことを言いますが、単に液体が溜まっているだけと思って放置するのは危険です。一番怖いのは膵臓癌があることです。でも、膵癌が無かったとしても、手術を必要としたり、定期的に検査をしていったほうがよい病気が隠れているかもしれません。
たとえば、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN: Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm)という病気があります。
まずは膵臓について簡単にご説明しましょう。膵臓は胃の裏側にあり、消化や血糖のコントロールに関わる重要な臓器です。タラコみたいな形をしていて、中心に主膵管という太い管が走り、そこから枝分かれする分枝膵管があります。主膵管は十二指腸につながっています。この管の中を膵臓で分泌される膵液という消化液が十二指腸に向かって流れています。
分枝型IPMNのイメージ
IPMNは、膵液の通り道である膵管内に乳頭状に増殖する腫瘍で、粘液を産生することで嚢胞状となることが多く、膵管が太くなることもあります。良性から悪性まで様々な段階があり、経過中に悪性になることもあります。遺伝子異常の報告もありますが、原因ははっきりしていません。
IPMNは出来る部位によって、「分枝型」「主膵管型」、両者の「混合型」に分かれます。
エコーで膵嚢胞と指摘された方の多くは、腫瘍が主に分枝膵管に存在し、粘液が溜まる「分枝型」です。治療を必要としないものが大半を占めますが、一部には癌化を疑って手術を検討すべきものもあります。
一方、頻度は低いのですが、主膵管に腫瘍が存在し、粘液が主に主膵管内にたまる「主膵管型」の方もいます。既に癌化していたり、癌になりやすかったりするため、手術をお勧めする場合が多いです。
健康診断・人間ドックで行うエコーは体に負担無くできる検査ですが、膵臓自体がエコーでは見にくく、精密検査には向いていません。膵嚢胞があることがわかったら、まずCTやMRIで膵管の形、病変の大きさや広がり、悪性所見の有無を評価します。
分枝型IPMNのMRI
さらなる精密検査が必要な場合は、超音波内視鏡検査(EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)という内視鏡を用いた検査を行います。EUSは胃や十二指腸から超音波で膵臓を観察する検査で、IPMNの内部や膵管の状態を観察できます。悪性がより疑わしい場合には、入院してERCPを行います。
現在癌が無さそうと判断しても、膵癌や他の臓器に癌が合併しやすいといわれていますので、定期的な検査をお勧めしています。IPMNは症状が無く、偶然発見されることが多い病気ですが、検査で疑われたら一度消化器内科を受診されることをお勧めいたします。
消化器内科の医師、研修医