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病気のはなし

非アルコール性脂肪肝-メタボな肝臓-

消化器内科 小池 幸宏
(緑のひろば 2010年4月号掲載)


少々専門的な表現になっていますが、要するにアルコールを原因としない脂肪肝のことです。英語ではNAFLD(Non-alcoholic fatty liver disease)とも言います。“肝臓が悪い”と言うと、アルコールの多飲や、最近ではすっかりおなじみになったC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルスを思い浮かべる方が多いと思います。NAFLDとはそのいずれにも当てはまらず、肥満や糖尿病、高コレステロール血症などと関連して肝臓に脂肪が蓄積したことにより引き起こされる病気(状態)です。多くの場合は症状がなく、血液検査をすると肝機能検査の値、特にGPT(ALT)などに異常をきたします。一言で言えば、最近盛んに言われている“メタボ”な人の、肝臓の病気と言えます。
もともと日本人には決して多い病気ではありませんでしたが、食生活の西洋化や、肥満の増加に伴いその頻度は成人の10〜25%に及ぶと考えられています。また、NAFLDの大部分は予後良好とされていましたが、その一部に炎症や線維化(肝臓が硬くなる)が合併し、進行性に肝硬変や肝癌を発症することが知られるようになりました。そのような状態まで進むと非アルコール性脂肪肝炎 (NASH;Non-alcoholic steatohepatitis) と呼ばれます。こうなると立派な病気です。NASHの診断には通常肝生検(肝臓に細い針を刺して細胞を採取すること)が必要とされますが、血液検査や超音波検査などでもおおよその診断は可能です。
治療法に確立したものはありません。カロリー制限や運動などを中心に一部薬物療法などが試みられている状況です。最近アメリカの有名な医学雑誌「Hepatology」に、NASHと診断された患者さんに1年間の厳格な運動とダイエット指導を行い、7%以上の減量に成功した方ではNASHの改善が認められたと言う論文が掲載されました。運動とダイエットによってNASHが改善する可能性が示されたわけです。ただ、7%の減量は一般の方ではなかなか達成が困難です。また、急激なダイエットはかえってNAFLDからNASHへの進展の原因になるとも考えられています。専門家の指導の下でゆっくり進めていくことが大切です。
当院でも、糖尿病で通院していた方に突然肝癌が見つかることがあります。肝炎ウイルスやアルコールに関連しない肝癌は今後も増え続けていくものと予想されています。“メタボ”な肝障害を指摘された方には専門医による診察と超音波検査など、定期的なフォローをお勧めします。


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