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病気のはなし

COPD(慢性閉塞性肺疾患)について

呼吸器内科 小島 康弘
(緑のひろば 2010年10月号掲載)


医療番組などでCOPDという病名を聞いた事はあるでしょうか。COPDという病名は知らなくとも、肺気腫という病名なら知っている方は多いと思います。最近の医学では肺気腫と慢性気管支炎の二疾患を合わせて慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とまとめており、英語の頭文字からCOPDと呼びます。つまり、COPDというのは肺気腫の新しい名前だ、と思って頂ければおおむね大丈夫です。

この病気の特徴は息が吐きづらくなることです。COPD患者さんは病名の通り“肺が閉塞”し、空気の流れが悪くなり息が吐き出しにくくなっています。この息の吐きづらさのことを気流制限と言い、呼吸機能検査(いわゆる肺活量の検査)を行えば簡単に調べることができます。最大に息を吸ったところから一秒間に吐き出せる息の量を一秒量と言い、これの肺活量に対する割合のことを一秒率と言いますが、一秒率が70%を切るとCOPDと診断されます。肺活量に対して一秒間に吐ける息の量が少ない、つまり息が吐きづらいということです。
COPDの初期症状は、坂道や階段を上った際に息切れがする、というのが代表的です。進行すると次第に平地の歩行でも息が苦しくなり、また初期はちょっと休めばすぐに楽になったのが回復までに長い休憩が必要になってきます。息切れの他にしつこく続く咳や痰で発症する方もいます。

原因はほとんどタバコです。COPD患者の90%以上が喫煙者で、一般的に20年以上の長期喫煙により発症します。しかし、化学物質や粉塵の吸入により気管支や肺が障害され慢性の炎症が起こることが疾患汚染、職業的な塵埃吸入などでも発症します。稀ですが遺伝による発症もあります。
喫煙や粉塵吸入による炎症が長い年月続くと、徐々に不可逆的な肺の破壊が生じます。この肺構造の破壊によって息が吐きづらくなり、体内に酸素を取り込みにくくなるので息が苦しくなります。そして、肺は一度壊れると再生しない臓器なので、進行したCOPDは治りません。できる限り病気の進行を遅らせる事と、症状緩和が治療の主目的となります。
治療の中では進行させないための禁煙が最重要です。薬では、息を吐きやすくする気管支拡張薬、対症療法の鎮咳薬や去痰薬、炎症を抑えるステロイド薬などがあります。他に、感染合併を予防するワクチン接種、体力維持のための栄養補給やリハビリも重要です。また、重症になると薬だけでは酸素不足を改善できないため、在宅酸素療法も行われます。

統計では日本全体で500万人以上のCOPD患者がいると推測されていますが、実際に診断され通院しているのは20万人程度しかいません。これは軽症の間は病院を受診せず、診断されないからだと言われています。何十年間も喫煙を続けた末に息が苦しくなって病院を受診したらCOPDと診断されたがその際にはもう重症だった、というケースは確かに多いです。
COPDは進行すると治らない上に、病初期には自覚症状がほとんど無く気づきにくいというやっかいな病気です。しかし、早期に発見できれば禁煙で病気の進行を遅らせ、治療を受けることで自覚症状を軽くし、同年代の健康な人と同じような生活を送ることができます。40歳以上で喫煙している、あるいは以前に喫煙していた方で、労作時息切れや慢性の咳・痰などの症状がある場合まずは一度医師に相談してみてください。もちろん症状が無くとも喫煙歴があって不安な場合は気軽に申し出てくださるようお願いします。


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