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病気のはなし

伝統食と心臓病

心臓血管外科部長 笠原 勝彦
(緑のひろば 2012年5月号掲載)


医食同源という言葉があります。意味は日々の適切な食事が薬と同じ効果をもたらし人の健康を維持するということです。食べたものがその人の血液となり体を造っているのですから、何を食べて生きるのかは健康を考える上で重大な問題です。

今回は、実際に手術の現場で血管の動脈硬化の恐ろしさを目の当たりにしている心臓血管外科医の立場から、どのように食べたら循環器の病を予防できるのかをお話しします。

まず始めに知っていただきたいことは、1960年代から循環器疾患が日本人全体の死亡率に占める割合が年々増加しているということです。1960年代と言えば日本の高度経済成長が始まった時期です。そしてこの頃から日本人の食生活のパターンは変化しました。つまり経済の成長とともに欧米型の動物性脂肪の摂取が増え、同時に主食である穀物の摂取量が減ったということです。循環器疾患増加の因果関係は明らかでしょう。

さて、私は動脈硬化性の病で手術を受けられる患者さんに「食べ物で好きなもの、嫌いなものは何ですか?」といつも質問しています。多くの患者さんに共通しているのは野菜が嫌い、お肉が大好きという答えです。手術を受けるに至った時点ではそんなに食べていないという方でも、よくよくお話を伺うと、かつてはたくさんお肉を食べていたという事が多くあります。もちろん例外もありますが、やはりどこかの時点でかなりコレステロールのレベルが高くなっていた時期があり、これが動脈硬化を促進してしまったのではないかと考えられます。コレステロールは細胞の膜をつくったり、胆汁やホルモンをつくったりと生体の維持に欠かせない脂質です。コレステロールの代謝は複雑で、一言では説明できませんが、大切な事は、胆汁として消化管に出たコレステロールは腸管で再吸収され肝臓に運ばれ再利用されるということです。おそらくこの働きはサルから進化した人類が、本来油脂をたくさん摂取できない環境で生活していたことに関係があるように思います。つまり本来人類は過剰な油脂の摂取は必要としていないのです。動物性脂肪の飽和脂肪酸(室温で固まる油)の過剰摂取は肝臓を刺激し、除去能力を超えたLDL(悪玉コレステロール)を作り、その結果動脈の壁を傷つけ硬くし、早すぎる死や冠動脈疾患、大動脈疾患、末梢動脈疾患を招きます。体全体の血流は変化し、血流が悪くなるので他の病に対する治癒力も低下してしまいます。

私が薦める循環器疾患を防ぐ食生活とは、思い切って動物性脂肪、即ち飽和脂肪酸の摂取を少なくすることです。飽和脂肪酸を多く含む食品は牛肉、豚肉、羊肉、皮付き鳥肉、乳製品、熱帯性油(ヤシ油、ココナッツ油)等です。基本的には日本の伝統食である穀物を中心として、大豆製品、海藻、季節の野菜や果物を少しずつ摂るとよいでしょう。日々のカルシウムや乳酸菌の摂取は海藻、葉野菜、ゴマ、たくあんなどの漬物から摂れば十分です。“腹八分目に病なし”食べ過ぎないためには食物がその形がなくなるまでよく噛んで、時間をかけて、季節を味わいながら楽しく食事をすることも大切です。胃腸の負担も軽くなり、身も心も軽やかになるでしょう。

“病は口より入る”どうか皆さん、この飽食の時代において日々何を食べるのか、本当に飽食が健やかな長寿社会をもたらすのか、もう一度伝統食の良さを省みていただきたいと思います。


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