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病気のはなし

アルツハイマー病について 診断と治療の実際

神経内科 坂本 昌己
(緑のひろば 2010年8月号掲載)


【はじめに】
認知症、特にアルツハイマー病について全般的なことを説明いたします。

【アルツハイマー病とは?】
アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)は、認知機能低下、人格の変化を主な症状とする認知症の一種です。日本では、脳血管性認知症、レヴィ小体型認知症と並んで最も多いタイプの認知症です。アルツハイマー病には、以下の2つのタイプがあります。

@アルツハイマー型老年痴呆(Senile dementia with Alzheimer's type; SDAT)
アルツハイマー病の中でほとんどを占めるタイプ。老年期(通常60歳以上)に発症します。
A家族性アルツハイマー病(Familial AD; FAD)
アルツハイマー型認知症の中でもごくごく少数を占めるものです。常染色体優遺伝パターンを示し、30〜60歳代と比較的若年で発症するものです。

【頻度は?】
今や65歳以上で13人に1人、85歳以上では4人に1人と高頻度です。高齢化が進むにあたり大きな問題といえます。

【病態は?】
異常な蛋白(変異型アミロイドベータ蛋白)が凝集、線維状の変化(神経原線維変化)を起こしながら脳内に蓄積し(老人斑という)、神経細胞の変性、脱落を起こすことがわかっています。

【原因は?】
全てがはっきりとわかっている訳ではありませんが、最近ではいわゆる成人病(高血圧、肥満など)が危険因子であるといわれています。家族性アルツハイマー病の場合、原因遺伝子が特定されているものもあります。

【どうやって診断しているか?】
初期症状として失見当識(時間や場所や人に関する見当づけができなくなること)や近時記憶障害(最近の出来事を忘れてしまうこと)の有無を問診、診察し、さらに他の認知症との鑑別が主となります。内科疾患(甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、肝臓病、腎臓病、電解質異常など)、栄養障害、精神科疾患(うつ病など)、脳腫瘍や脳血管障害(多発性脳梗塞、慢性硬膜下血腫など)との鑑別が必要です。また、最近ではレヴィ小体型認知症との鑑別にMIBG心筋シンチグラフィーという検査が施行されています。これは脳から心臓に伸びている交感神経の状態を評価する検査で、レヴィ小体型認知症で非常に高率に異常が認められることから、アルツハイマー病との鑑別に大変有用であると考えています。

【頭部MRIは診断に有用か?】
MRI検査は脳の気質的疾患の除外目的では非常に有用です。しかし万能な検査ではありません。脳MRI所見のみからアルツハイマー病を診断することは基本的に不可能です。なぜなら正常老化脳でも程度の差こそあれ脳の萎縮は認められ、また症状の重症度と脳の萎縮の程度も相関しないと考えられているからです。先に述べた診察やその他の検査と組み合わせることで大変有用な検査となり得ます。

【治療は?】
現在本邦では、アリセプトの投与が進行を遅らせる上で有用と考えられており、また唯一の治療薬です。しかし、病期が進行し、徘徊、興奮(易怒性など)の精神症状が出現した場合、逆に症状を増悪させることもあるため、その場合はむしろアリセプト投与を中止し、安定剤、向精神薬の投与が必要となり得ます。その他、認知症の周辺症状に対して有効な漢方薬も処方される場合もあります。また、現在治験進行中の治療法もあり、今後に期待されています。



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