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病気のはなし

食道がんについて

健康管理科 小島 正久
(緑のひろば 2008年11月号掲載)


食道がんは2006年のがん死亡数では第7位(1位は肺がん)で、男性は9650人、女性は1695人が食道がんで亡くなっています。1975年の統計では男性3862人、女性1135人なので、この30年の間に合計では2.3倍に増えていますが、男性は2.5倍、女性1.5倍なので男性の増加が目立ち、現在は食道がんの85%は男性が占めています。咽頭がん(口腔を含む)は72%、喉頭がんは94%が男性でこの領域のがんの特異性が良く分かります。つまり飲酒と喫煙が大きく関与しているのです。特に食道がんは飲酒の関与が強く、アルコール依存症を中心に診療をしている国立の久里浜病院で胃の検診をすると食道がんは胃がんの3倍発見されるという報告があります。
食道がんの症状はつかえ感、嚥下困難ですが、これは進行した時の症状で早期の場合症状はありません。胸のつかえ感や嚥下困難は更年期以降の女性で訴えが多くなりますが、この方たちを検査に回してもあまりがんは見つかりません。男性はむしろ症状はあまり訴えず、つかえ感があっても酒を食事の代わりに飲んで誤魔化したりするので、病院を受診する時にはかなり進んでしまっていることが多いようです。早期発見はやはり検診しかありませんが、検診でもバリウムを使ったX線透視検査では早期がんの発見はなかなか困難です。当院ドックでも10〜20年前のデータでは10年間で食道がんは1人しか見つかりませんでしたが、内視鏡検査が中心になった今では年に2人程発見されるようになりました。内視鏡でも早期がんを見つけるのは難しいのですが、これはおかしいと思ったときは、ルゴール(よくのどのうがいに使用される)をかけると正常粘膜は染まりますが、がんの部分だけが染まらないので病変が明瞭に描出され診断が容易になります。現在ドックで発見された食道がんの半数近くは粘膜内に限局した超早期のがんで、このような症例は内視鏡的粘膜切除術が行われていますが、多量飲酒者は経過を見ているうちに咽頭がんが出てきたりするのでその後も注意が必要です。
食道がんは扁平上皮がんが多く、これは放射線もよく効くので、早期がんならば放射線治療だけで完治することもあります。ある程度進行したものになるとやはり外科的治療が中心となります。ただし根治手術の際は切除した食道の代わりに胃を吊り上げるか、大腸を受動してもってくる必要があるので、胸と腹を開け、更に頸部で食道とつなぐ(吻合)ため、3箇所の切開となり、更にリンパ節郭清を行うと声が枯れたり、痰が出しずらくなり(喫煙者が多いので全身麻酔後の痰の量も多い)結構辛いものがあります。30年位前までは食道の吻合は高度な技術を必要とし、縫合不全も多く、うまく繋げることが出来ただけでも名人と称されたものです。最近は技術も進歩しそういう心配は減りましたが、まだ予後も胃がんや大腸癌と比べるとかなり不良なので、できれば罹らずに済ませたいがんです。


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