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病気のはなし

顔面けいれんについて

脳神経外科 室田 武伸
(緑のひろば 2008年8月号掲載)


喜怒哀楽・・ヒトを含め、多くの動物には表情があります。(笑ったカラスや怒ったナマコなんて見たことないゾ、なんて言われると困ってしまいますが。)表情ってどのように作られるのでしょう?それは、脳に生じた感情が電気信号となってほとんど無意識のうちに顔面の筋肉(たとえば目のまわりの眼輪筋や口のまわりの口輪筋)に伝わり、それらが伸びたり縮んだりシワを作ったりすることによりできます。もう少し具体的に言うと、大脳から生じた信号(顔面の筋肉への命令)は、脳幹、さらに顔面神経に伝わり、顔面神経は内耳道という頭蓋骨の中のトンネルを通って表面近くに達し、そこで細い枝に分かれて顔面のさまざまな筋肉を伸縮させ、表情を作らせるわけです。
ところが、脳から出る本来の命令ではない異常信号が顔面神経に生じてしまう病気に、顔面けいれんがあります。症状としては、片側のまぶたが発作的に勝手にギューと力が入って開かなくなったり、口の周りがひきつってしまい、それが人前で話す時などの精神的緊張時に強く現われます(筆者の顔写真でまねしてみました。)そのための美容上の問題のみならず、人と話すのが苦痛になるなど、心理的な問題も生じがちです。痛みは伴いません。(ただし、若い女性にウィンクしていると奥さんに誤解され、ほっぺたをつねられるような場合はありえますが。)世間ではよく、この病気に対して顔面神経痛という言葉が使われますが、医学的には正しくありません。顔が痛むのは、三叉神経痛という別の病気です。
さて、では本来の命令ではない信号がどうして顔面神経に生ずるのか?そのメカニズムが最近ではかなりわかっています。それは、脳幹から顔面神経が分かれてすぐの場所にある血管が顔面神経にあたっていてその拍動が顔面神経に伝わり、ここで誤った信号が作られ、その結果、顔面の筋肉がけいれんしてしまうというもので、多くの場合はこれが原因と考えられています。(一部には、あてはまらない例もあります。)この神経と血管との位置関係はMRI検査で調べることができます。
治療としては三つの方法があります。
(1)抗けいれん薬などの薬物療法
(2)ボツリヌス菌抽出液を顔面の筋肉に注射してわざと筋肉の力を弱める方法
(3)手術で、顔面神経にあたっている血管を少し移動させたり、神経との間にクッションをはさんで、拍動が顔面神経に伝わらないようにする方法。
これらのうちでどれを選択するかは、患者様の症状の程度、ご希望、年齢などの要素を総合して判断するようにしています。


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