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病気のはなし

アルコール依存症について

精神科 菊地 秀明
(緑のひろば 2008年9月号掲載)


日本人の50人に1人がアルコール依存症であると言われており、その多くの人が内科で体の治療のみを受けています。アルコールによる体の障害の多くは酒をやめるとすぐに良くなりますので、内科に入院しても数週間で退院となります。そして再び飲み始めては体を悪くし、入退院を繰り返しているうちに、若くして命を落としてしまいます。最近の特徴としては、女性の割合が増え(約15%)、その他、若者、定年退職後の高齢者の増加がみられます。

【アルコール依存症とは】
お酒を飲み続けるうちに、飲酒のコントロールがつかなくなってしまう「病気」です。『やめようと思っても、やめられない病気』『ほどよい量でとめられない病気』と言っても良いでしょう。アルコールを飲んでまずいこと(体を壊す、家族への暴言・暴力、友人を失う、会社への遅刻・欠勤、失職など)が起きても、お酒をやめることができない。これが依存症という病気です。このような患者さんの自己治癒は困難ですので(本人の意志や根性だけでは治りません)、専門病院での治療が必要となってきます。
やめられないのはなぜか。それは、お酒には強い「依存性」があるからです。依存性には二つあり、まず一つは「精神依存」です。これは例えば、嫌な気分から逃れるためにお酒に頼ることで、飲み続けているうちにお酒なしにはその解消ができなくなってしまう。もう一つの依存は「身体依存」です。お酒が切れてくると、苦しい体の症状が出ます。手のふるえ、嫌な汗をかく、熱が出る、動悸などです。イライラ して夜も眠れなくなります。重症の方ですと、痙攣発作を起こしたり、幻覚を見るようになります。患者さんは、例えば手の振るえを止めるために、朝から飲むようになります。楽しく飲むのではなくて、飲まずにはいられなくなるという感じです。

【アルコールによっておこる体の病気】
依存症患者さんの3大死因は、肝硬変、心不全、不慮の事故で、治療を受けないと平均で50〜52才で命を落とします。アルコールによる肝障害は、脂肪肝 → 肝炎 → 肝硬変と進行します。食道静脈瘤破裂(吐血)にて、致命的になることもあります。また、糖尿病の合併症や低血糖、大量飲酒によって起こる突然の不整脈が死亡の原因になります。
大量飲酒が続くと、アルコール性脳萎縮が起こります。毎日の飲酒量が日本酒2合以上、ビール大瓶2本以上で脳が萎縮し始めるといわれています。症状としては物忘れや、怒りやすくなる、涙もろくなる、理性や道徳心、計画性、柔軟性がなくなるなどです。最終的には認知症と同じような状態になってしまいます。

【アルコール依存症の治療】
治療は、アルコール依存症治療プログラムのある専門的な病院で行われ、入院治療を含め、集団療法を中心に行われます。当院精神科の病棟は、思春期病棟であり、また、外来での専門プログラムも行っていません。このため、近隣の専門治療機関であり、アルコール依存症の入院治療も行える、都立松沢病院、井之頭病院、桜ヶ丘記念病院、昭和大学附属烏山病院、国立武蔵病院、などに御紹介しています。また、地域の精神保健福祉センターや保健所などでは、酒害相談の窓口を設けて、地域の方の相談に対応しています。


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