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病院広報誌

緑のひろば

2017年11月号

人間は考える足である?

心臓血管外科部長 笠原 勝彦

 山田洋次監督の映画、「男はつらいよ」は渥美清扮するテキ屋稼業の「フーテンの寅」こと車寅次郎(寅さん)が、何かの拍子に故郷の葛飾柴又に戻ってきては、何かと大騒動を起こす人情喜劇シリーズです。毎回、縁あって出会った「マドンナ」に惚れつつも、成就しない寅さんの恋愛模様を、日本各地の美しい風景をバックに描いています。全49作中の第16作 葛飾立志篇はフーテンの寅さんが決然と「己を知るために」学問を志します。とは言ってもその動機はまたしてもマドンナ役の樫山文枝演ずる礼子の気を引こうとしての事なのですが。次の場面は、寅さんの知らぬ間に礼子がとらや(寅さんと家族が住む葛飾柴又の団子屋)に下宿していて、その晩の茶の間で今度は「朝に道を聞かば」をめぐって寅さん独特の解釈が展開される爆笑シーンの一部です。

(前田吟演ずる寅さんの義理の弟)「これから兄さん、考えるんですか。」
寅次郎「あーバッチリ考えるよ。」
礼子「大事よ、考えるって。ほら、人間は考えるだっていうでしょ。」
寅次郎「えっ、誰がそんなこと言ったの?」
礼子「西洋の偉い哲学者。」
寅次郎「はー、偉い人はで考えるのかねえ。俺は頭で考えるのかとずっと思っていたよ。」

 さて、形態的に下肢の静脈が瘤状に異常に拡張し蛇行を伴うものを静脈瘤と言います(下記写真)。

静脈瘤

この下肢静脈瘤は先史時代以来、人類を悩ませてきた病らしくB.C.400年頃には、かの医聖ヒポクラテスが静脈瘤の治療には圧迫が大切である、と最初に指摘して治療の道を開いています。下肢静脈瘤は美容的な問題だけでなく足の皮膚変化、筋肉疲労、体調、仕事との関連、精神的苦痛など社会生活に影響します。本来心臓に速やかに戻っていく血液が足の表面にある静脈の弁不全により逆流が生じ血液が足に引き返し、うっ血を生じます。これが足の筋肉の慢性疲労、浮腫、うっ滞性皮膚炎、色素沈着、皮膚硬化などを引き起こします。放置すればぐずぐずしてなかなか治らない皮膚潰瘍ができてしまうこともあります。また、うっ血により足の筋肉に負担がかかり膝痛を生じている場合もあります。下肢静脈瘤の治療は、エコー検査やCT検査で診断した後、その程度と形態によって治療法を選択します。当院では、ごく軽症の場合は足を圧迫する弾性ストッキングの着用などで経過を見ますが、中等以上の場合は、手術としてレーザー治療を基本としてお勧めし行っています。レーザー治療は逆流の原因となっている血管にレーザーを放射する管を挿入し、血管を内側からレーザーで焼灼します。従来の手術に比べて術後の痛みや出血が少ないのが特長です。局所麻酔か全身麻酔で手術を行い、静脈瘤が軽度のものは日帰り手術も可能です。入院する場合は通常 1 泊 2 日もしくは 2 泊 3 日です。

 以上のように下肢静脈瘤の症状は多様で生活全般に影響を及ぼします。

 足の健康を保つという事は、足をたると読むように人間の健康はこれでたりるのだというぐらい大事な条件です。そういう意味から言うと寅さんが言うところの“人間は足で考える”というのもまんざら勘違いとも言えないかも知れません。

 男はつらいよ第13作“寅次郎恋やつれ”では偶然旅先で幼馴染の歌子(マドンナ役の吉永小百合)に寅さんは出会います。歌子が伴侶に先立たれて不遇な境遇にいることを知った寅さんが別れ際に優しく語りかけます。“もし何かあったら葛飾柴又のとらやに訪ねて来な。悪いようにはしないから”。 寅さん風に言わせてもらいます。“もし足の静脈にこぶがあったら世田谷上用賀の関中に訪ねて来な。悪いようにはしないから”


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