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病院広報誌

緑のひろば

2017年10月号

メタボリック症候群と泌尿器疾患について

泌尿器科部長   町田 竜也

2008年から「メタボ健診」が開始されており、メタボリック症候群という言葉を耳にされた方は多いかと思います。メタボリック症候群は、近年の食生活や生活習慣の変化により増加しており、内臓肥満と高血圧、耐糖能異常(高血糖)、脂質異常により、心臓病や脳卒中をまねきやすい病態とされています。最近いくつかの泌尿器疾患についても関連があることがわかってきており、今回はこのお話をしたいと思います。

がん:メタボリック症候群における高血糖、低酸素状態、慢性炎症などが、発がんのメカニズムとして考えられています。泌尿器がんで増えている前立腺がんでは、発生リスクやがん細胞の質の悪化への関与、治療(手術、体外から放射線を照射する「外照射」、ホルモン療法)の効果に悪影響を及ぼす可能性が報告されています。また腎臓がんでも、糖尿病、肥満、高血圧による発生リスクの増加、糖尿病が予後に悪影響を及ぼす可能性について報告されています。ただしこれらは欧米の報告がほとんどであり、日本での研究成果が待たれるところです。

尿路結石:肥満、糖尿病、高血圧と個別のみならずメタボリック症候群で尿路結石が多く、メタボリック症候群の一つの疾患ともいえるかもしれません。肥満では結石形成を促進する因子である高尿酸尿症や高シュウ酸尿症の頻度が増加、肥満度に比例することが知られています。こうした無機成分の関与だけではなく、動脈硬化の形成と同様の機序で有機成分が増加することが結石形成に関与するという報告もされています。実際に若年男性と高齢女性において、結石患者者と健常者を比べると、結石患者のほうが腹部大動脈の石灰化が多かったという報告があります。現在尿路結石の予防及び治療薬はほとんどないため、メタボリック症候群の視点からの新薬の開発も期待されます。

排尿の症状:よく知られているものとして、肥満による失禁の悪化、糖尿病による多尿や膀胱機能低下(残尿が増えるため、結果として頻尿さらには排尿困難、尿閉となる)などがあります。高血圧は夜間多尿をきたしやすいのみならず、膀胱が過敏になり頻尿をきたすともいわれています。さらに動脈硬化は膀胱の虚血状態を引き起こし、頻尿などの症状をきたすと考えられています。男性においては、前立腺肥大症との関連が指摘されています。高血圧、糖尿病、脂質異常症に起因するさまざまなメカニズムが関与すると考えられています。

勃起障害、男性更年期:勃起障害の割合を比べると、メタボリック症候群のほうが多いという報告が多くされています。高血圧だけで1.5倍から2倍、糖尿病だけで3倍から4倍程度、勃起障害のリスクが高くなるといわれています。またテストステロン、いわゆる男性ホルモンも低下することも知られており、ホルモン補充療法を行うとメタボリック症候群の項目が改善したとの報告もあります。今後ホルモン補充療法が、男性更年期障害の治療のみならず、メタボリック症候群の治療として注目されることがあるかもしれません。

 以上メタボリック症候群と泌尿器疾患について簡単にお話ししました。今後も次々と新しい発見があると思いますが、泌尿器科を受診される方も(もちろんそうでない方も)メタボリック症候群の予防と治療が大切だといえます。


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