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病院広報誌

緑のひろば

2017年8月号

乳癌における乳房温存手術後の放射線治療

放射線科部長   服部 英行

乳癌における(乳房を残す)乳房温存手術後の放射線治療は、乳房内再発を有意に低下させ、生存率も向上させることが証明され確立されている治療です。乳房温存手術を受けられた患者様で、術後の放射線治療を行う必要のある患者様は、乳房温存手術を行われた方全員となります。逆に、放射線治療を行うことが困難な患者様は、基本的に乳房温存手術そのものを避けるべきと考えられています。放射線治療を行うことが困難と考えられている患者様は、患側乳房に放射線治療が行われたことがある方、妊娠中の方、仰向けで患側上肢の挙上が困難な方、活動性の強皮症や全身性エリトマトーデスを合併している方などです。

放射線治療(照射)を行う範囲は、温存乳房全体です。腋窩(脇の下)リンパ節転移が4個以上存在した場合は、温存乳房全体への照射と同時に、所属リンパ節領域(同側腋窩リンパ節領域〜同側鎖骨部リンパ節領域)への照射が必要になります。腋窩リンパ節転移が1〜3個の場合は、所属リンパ節領域の照射を行っても生存率が向上することは証明されていません。このような患者様には、放射線治療後の合併症の可能性を考え、当院では、原則、所属リンパ節領域への照射を行っていません。しかし、基本的には患者様や乳腺外科医と話し合って決めていくことになります。乳房全体への照射と所属リンパ節領域への照射は、平日、毎日1回ずつ行います。線量は、双方とも、一般的に1回2グレイ(吸収線量の単位)、総線量50グレイであり、回数は25回となります。祭日を挟まない場合で、開始から終了まで5週間です。また、乳房温存手術での病理診断が、切除面近く(5mm未満)に癌細胞が存在した場合は、乳房全体への放射線治療が終了した後、切除した部位に限局した放射線治療を5回(線量は1回2グレイ、総線量10グレイ)追加します。この場合は、祭日を挟まない場合で、開始から終了まで6週間となります。祭日がある場合は、治療期間がそれだけ長くなりますが(回数は同じです)、年末年始などの長い連休の場合は、休日でも1〜2回の治療を行います。治療時間は、1回目は30分ほどかかりますが、放射線を照射している時間は1分ほどであり、2回目以降は、治療室に入ってから出るまで、通常10分程度です。

放射線治療中、疲れ、だるさ、眠気などを感じることがあります。しかし、仕事をされながら放射線治療を行った患者様も数多くいますが、多くの患者様が仕事を中断することなく治療を完遂しています。また、日焼けと同様な皮膚の炎症が起きます。個人差は大きいですが、多くの方が元の色に戻ります。1〜2%の方に、治療終了後2か月程度経過したのち、咳、発熱などの放射線肺炎の症状が出現することがあります。ごく稀に入院治療が必要になる場合がありますが、症状が出現した場合でも、外来治療で済むことが多いです。腋窩リンパ節を摘出した患者様は、同側上肢の浮腫が出現することがあります。鎖骨部リンパ節領域を照射した患者様は、極めて稀に腕神経障害が起こるとされています。左側の場合に、極めて稀に心膜炎や心機能障害が起こるとされていますが、当院では認められていません。

乳房温存手術後の放射線治療は、問題となる合併症が非常に少なく、日本だけでなく先進国では例外なく行われている治療です。乳癌で乳房温存手術を行われた方は、安心して手術後の放射線治療を受けてください。


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