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病院広報誌

緑のひろば

2017年4月号

パーキンソン病

神経内科部長 織茂 智之

  

パ−キンソン病とは、1817年ジェームス・パーキンソンによってはじめて記載された病気で、50〜60歳代に多く発症し、脳や末梢自律神経系などの神経細胞がゆっくりと変性する(衰える)神経変性疾患の一つです。原因はまだ完全には解明されていませんが、パーキンソン病では神経細胞やそこから出ている神経線維にアルファシヌクレインというタンパク質が蓄積しますが、これが蓄積する過程で神経細胞が障害を受けるのではないかと考えられています。蓄積して球状になった構造物はレビー小体と呼ばれています。パーキンソン病は加齢とともに患者数も増え、現在本邦の患者数は、人口10万人あたり150人とされています。

 パーキンソン病の臨床症状としては、運動症状として、手足がふるえる「振戦」、筋肉が硬くなる「筋強剛または筋固縮」、動きの振幅が小さく遅くなる「運動緩慢」、姿勢のバランスがうまく保てない「姿勢保持障害」の4つがいわゆる4大運動症状とされます。振戦は左右どちらか片側の手からはじまり、次に足に現れてくるのが一般的で、また手の振戦は、手を膝の上に置いた静止時(静止時振戦)や歩いている時に多くみられます。筋強剛とは、筋肉が硬くなってスムーズに体を動かすことができなくなる状態です。運動緩慢のため動作が鈍く、動き出すのに時間がかかります。姿勢保持障害は体のバランスが悪く倒れやすくなる状態で、病気が進行するにつれて現れてきます。 パーキンソン病では運動症状以外にさまざまな非運動症状がみられます。便秘、起立性低血圧による立ちくらみや失神、頻尿などの自律神経症状、抑うつ状態や幻覚などの精神障害、認知障害、不眠、日中の過度の眠気、最近特に注目されているレム睡眠行動障害(睡眠中に突然大声を出したり急に起き上がってしまったりする)、嗅覚障害などです。これら非運動症状は運動症状に先行することもあり、早期診断につながる重要な症状と考えられています。

 パーキンソン病の診断は、まず前述の4つの運動症状うち、運動緩慢と振戦あるいは筋固縮のどちらか、あるいは両方が認められればパーキンソン病の症状がある、すなわちパーキンソニズムがあると考えます。パーキンソニズムを呈する疾患は幾つかありますので、病歴や服薬歴、脳MRI、さらにMIBG心筋シンチグラフィ(心臓のMIBG集積が低下していればパーキンソン病の可能性が高い)、ドパミントランスポーターシンチグラフィなどの検査で鑑別していきます。最終的には、パーキンソン病の治療薬により自覚症状、神経症状に明らかな改善がみられればパーキンソン病と診断します。

 パーキンソン病の治療の主体は薬物療法ですが、その他脳深部刺激療法などの脳の外科的治療、リハビリテーションなどがあります。薬物治療の目的は、脳内で減少しているドパミンを増加させることで、ドパミンの前駆物質であるレボドパを服用します(ドパミン補充療法)。その他、ドパミンと同様の作用を有する薬(ドパミンアゴニスト)、ドパミンの放出を促す薬(アマンタジン)、ドパミンの分解をおこす物質の阻害薬(セレギリン、エンタカポン)、その他ゾニサミド、イストラデフィリン、アセチルコリンを減少させる薬(抗コリン薬)などを用います。脳深部刺激治療は、脳のある部位に電極を留置し、この電極の電気刺激によりその部位の過剰の活動を抑えて症状を改善させる治療法です。リハビリテーションは、薬物療法とあわせて車の両輪と考えられており、非常に重要な治療法です。リハビリテーションを行うことで、筋力がアップすると同時に、神経細胞どうしの連絡がより強くなり、このために機能が改善するものと考えられています。パーキンソン病と診断された時点で、まず散歩やストレッチなどを行うように指導しています。


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