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病院広報誌

緑のひろば

2016年4月号

虫垂炎の治療について

外科 叶多 寿史

今回は、「虫垂炎」の治療についてお話ししたいと思います。

その前に、この虫垂炎は盲腸の先にある虫垂という組織に炎症をおこす病気ですが、通称として「盲腸」もしくは「盲腸炎」と呼ばれることもあります。これは昔、虫垂炎の発見が遅れ、炎症が虫垂の根元にある盲腸まで広がった状態で発見されたケースが多かったためです。

さて、皆さんは、有名人が虫垂炎で緊急手術を受けたといったニュースを一度は聞いたことがあると思います。それだけ一般的な病気であり、統計を取ると全人口の1割弱が罹患すると言われています。治療は外科で行いますが、虫垂炎の手術は外科のなかでも、最も一般的な手術の一つです。

もちろん、虫垂炎の患者さま全てに手術が行われるわけではありません。治療法は2つに分けられます。1つは抗生剤治療で、俗にいう「虫垂を散らす」という治療になります。これは、一般に炎症の程度が軽い場合に選択されます。炎症の程度が強く、腹膜炎を生じている場合などは、手術治療が選択されることが多いです。

手術の方法としては、大きく2つにわかれます。1つは従来より行われてきた開腹手術、もう一つは最近、主流となりつつある腹腔鏡手術です。当院では、基本的に腹腔鏡手術を行っております。これは、おへそのくぼみからお腹の中に内視鏡をいれて、その他に5mm程度の傷口2ヶ所から鉗子をいれて行う傷の小さな手術です。この手術のメリットとしては、開腹手術と比べて、術後の傷の痛みが少なく、傷が膿むことも少ないこと、腸蠕動(※)の回復が早いことなどがあげられます。そのため、入院期間も短くてすみます。当院では術後、3〜4日程度で退院される方がほとんどです。一方、デメリットとしては、癒着などお腹の中の状況によっては、この方法で手術が行えないことです。その場合には開腹手術に切り替えて行うことになります。

さらに最近では、単孔式手術 (1つの穴で行う手術) を行う施設が増えてきており、当院でも行っております。これは、おへその傷1ヶ所のみで行う腹腔鏡手術です。おへその傷は治るとほとんど目立たないため、人によっては手術を行ったかどうか分からないほどです。当院では胆石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術に対しても単孔式手術を行っております。病状によって、全ての患者さまに行えるわけではありませんが、ご希望がありましたら主治医にご相談下さい。

最後に最近のトピックを1つご紹介します。
虫垂炎の一番進行した状態である、「膿瘍形成性虫垂炎」という病気があります。これは、炎症によって虫垂の壁が破れてしまい、周囲に膿の貯まりができてしまった状態です。そのような場合、従来は緊急手術となり、大きな開腹手術となっていました。虫垂を切除するだけでなく、腸管を一緒に切除しなければならない場合があるなど、侵襲の大きな手術になり、患者さまにとっても負担が大きなものとなっていました。そこで最近の考え方として、いったん抗生剤治療をして炎症を沈静化させた後、時間を空けて (多くは2ヶ月程度)から手術を施行する方法 「待機的虫垂切除術」 が行われるようになってきました。その場合には腹腔鏡手術や、場合によっては単孔式手術が行えるなど、患者さまにとってメリットが大きな治療法と言えます。

以上のように一口に虫垂炎の治療といっても、治療方法にはさまざまなものがあります。
患者さまの病状によっては、ご説明の上で選択して頂くことも可能ですので、遠慮なくご相談下さい。

※腸蠕動(ちょうぜんどう):消化管などの臓器の収縮運動のこと


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