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病院広報誌

緑のひろば

2016年2月号

閉塞隅角緑内障について

眼科部長 三嶋 弘一

緑内障は我が国において40歳以上では5%の人(約20人に1人)がかかる病気といわれています。緑内障は、視神経という目の神経が傷んで見える範囲(視野)が狭くなっていく病気です。ひとくくりに緑内障と言っても、実際には様々な種類があります。

 日本で一番多い緑内障は、正常眼圧緑内障といい、大きなくくりとしては開放隅角緑内障の中のひとつです。視神経は目の中の圧力(眼圧)が高いとその影響を受けて傷んでしまうのですが、正常眼圧緑内障では、眼圧は別に高くないのに視神経が傷み始めて、それがゆっくりと進んでいくという慢性的な病気です。

 一方で閉塞隅角緑内障というものがあり、これは正常眼圧緑内障とは全く異なる病気です。目の中には房水という水の循環があり、絶えず産生され、排出されていく構造になっています。これは眼球の中の話ですので、涙とは関係ありません。房水が排出されるのは 目の中の前の部屋(前房)の周辺部にある隅角という場所です(図1)。この隅角という場所がもともと狭い人がいるのですが、加齢に伴ってさらに隅角が狭くなると、隅角が閉じてしまう可能性がでてきます。実際に隅角が閉じてしまうと房水の排出ができなくなってしまいますが、それでも房水は産生され続けますから、目の中の圧力(眼圧)が上がってしまい、視神経が傷んでしまいます。これが閉塞隅角緑内障です。隅角が全周閉塞してしまえば眼圧が極度に高くなり、急性緑内障発作という状態になります。その場合、眼圧が50〜60mmHg(正常値は10〜21mmHg)もしくはそれ以上に上昇してしまうこともあります。そうなると目が痛くなったり、頭痛や吐き気を伴うこともあります。高い眼圧によって視神経が急激に傷んでしまうこともあります。緊急に対処を要する眼科救急疾患の一つです。また、隅角が部分的に閉塞して症状が出ない程度の眼圧上昇を繰り返し、慢性的に視神経が傷んでしまう場合もあります。

 閉塞隅角緑内障の治療は、前述の開放隅角緑内障の治療とは方針が異なります。狭い隅角が閉じてしまって眼圧が上昇し視神経が傷んでいるわけですから、隅角を広げる治療が最も重要になります。具体的には茶目(虹彩)にレーザーで穴をあけて房水が交通できるバイパスの道をつくる方法(レーザー虹彩切開術)や、分厚い水晶体というレンズをとり、厚みが薄い人工眼内レンズに置き換える手術(白内障手術)などです。薬を使って眼圧を下げる治療を併用することもありますが、狭い隅角を広げる治療が最も重要です。また、まだ閉塞隅角緑内障にはなっていないが、隅角がかなり狭い人(眼圧は正常で、視神経が傷んでいない人)も予防的に隅角を広げる治療をする場合があります。

 閉塞隅角緑内障にはなりやすい人の特徴があります。一つは遠視の人、つまり若い時から遠くがよく見える、いわゆる「目がいい人」です。また、中年以降にでてくることがほとんどです。逆に近視の人は一般的になりにくいと言われています。遠視の人は目(眼球)の長さ(眼軸)がもともと短いので、目の中の前の部屋(前房)が狭く、隅角も狭い傾向があるためです。

 現在の健診や人間ドックでは前述の正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障にかかっている人をスクリーニングできるようになっていますが、閉塞隅角緑内障になる可能性のある隅角の狭い人を調べることはできないのが現状です。隅角が狭いかどうかは実際に眼科外来や眼科クリニックなどを受診して眼科医の診察を受けなければわかりません。隅角が狭いだけでは症状はでませんから、若いときから「目がいい」人で、ある程度ご高齢のかたは、一度眼科受診してみたほうがよいでしょう。

 また、内科などほかの診療科で処方される薬などで、「緑内障と言われている人は眼科医師に確認してから服用してください」と言われている薬は、閉塞隅角緑内障の人や隅角が狭い人には使えません。これらの薬には、瞳孔を広げる作用がある場合があり、瞳孔が広がるときに隅角が狭くなり、閉塞しやすくなるからです。


図 眼圧の調節(房水の流れ)


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