このページでは、Javascriptを使用しています

病院広報誌

緑のひろば

2014年3月号

糖尿病の新しい話題

代謝内分泌内科 部長
水野 有三

前回、この場で糖尿病のお話しをしてから5年以上経ちました。2007年と2012年の統計を比較しますと、我が国の患者数は、890万人から950万人に増加しましたが、一方、糖尿病が疑われる予備軍は1320万人から1100万人に減少し、両者の合計人数としては2210万人から2050万人へと、戦後初めて総数は減少しました。健康日本21、健康増進法、特定健診などの効果がやっと見えてきた様です。しかし、患者数自体はまだ増加していますし、成人ですと一家に1人患者さんがいてもおかしくない程の国民病であることに変わり有りません。今回は、最近5年以内の比較的新しい糖尿病に関する話題をお話しします。

【新しい薬】
4年程前から、インクレチン製剤という画期的な糖尿病薬が使われ始め、今や350万人程の患者さんが使用しています。「トカゲの唾液からできた夢の新薬」としてテレビでも騒がれました。必要な時だけ膵臓からインスリンを分泌し易くする作用や肝臓から糖が出過ぎないようにする作用が有り、極めて低血糖になりにくいのが特徴です。内服薬(DPP-4阻害剤)と注射薬(GLP-1製剤)があり当院でも多くの患者さんが使い始めています。今春以降は、さらにもう一つ、画期的な新薬が登場してきます。SGLT2阻害剤と言い、腎臓の尿細管に作用して、尿からどんどんブドウ糖を垂れ流すように作用します。1日に50-80gのブドウ糖が尿から出てしまう事により、200-300kcal分の熱量を消費した勘定になり、血糖降下作用のみならず、体重も減少する効果が期待されます。遠くない将来には、iPS細胞やSTAP細胞を利用した再生医療が可能となり、糖尿病は完治する病気になるかも知れません。

新兵器:血糖持続モニタリング】
従来は針で指先を刺したりして血液を出し、自宅で自身の血糖値を測定するのが一般的でした。しかし、1日数回血糖値を測定しても、その間の血糖値がどうなっているのかは判りません。特に、夜間の入眠中の血糖値などは知るよしもありませんでした。ところが、数年前から、CGMS(continuous glucose monitoring system)という小さな装置が保険適用となり、当院でも昨年から利用を始めています。これは、24時間、5分ごとに連続して血糖を測定し、しかも1週間もの間、記録できる装置です。これにより、インスリンの調整が困難な患者さんや、夜間、食後の血糖値を知る必要がある患者さんの状態を把握することが可能になり、治療に活かされています。さらに、最近では、CGMSとインスリンポンプを合体させた装置も開発され、近々、臨床試験が行われると思います。

【新たな合併症】
近年、従来の合併症に加えて新たに注意を喚起された糖尿病合併症が幾つかあります。骨粗鬆症(骨折)、認知症、癌(肝臓がん、大腸癌など)、うつ病、歯周病などは、いずれも糖尿病患者さんでは2-4倍程度増えることが判ってきましたので、注意が必要です。

【管理目標の改定】
糖尿病の管理に重要な2〜3ヶ月の血糖平均値を示すHbA1c(ヘモグロビンA1c)の値が国際標準値(NGSP値)に改定され、多くの場合、従来の値(JDS値)より0.4%数値が高く表示されるようになりました。管理目標値も2013年6月に改定され、従来の5段階評価(優、良、不良、不十分、不可)から、3段階評価となりました。合併症予防のためには、HbA1c7.0%未満、血糖正常化を目指す際には6.0%未満、治療強化が困難な際は8.0%未満が新たな管理目標です。低血糖は極力防ぎながら、良いコントロールを目指すのが肝要です。


交通のご案内

今月の担当医

休診情報

公立学校共済組合の皆さんへ


採用情報

看護部Webサイト

ボランティアについて

行事・イベント

病院広報誌 緑のひろば

日本医療機能評価機構認定病院

厚生労働省臨床研修指定病院

このページのトップへ