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病院広報誌

緑のひろば

2014年2月号

乳癌について大事なこと

乳腺外科部長
館花 明彦

 旧第二外科以来、乳腺外科としては初めての登場です。今回は基本的に大事なことをいくつか話しましょう。

 まず、ひとくちに乳癌といっても実に多くの種類があり、近年はその性質によりとても細かく分類され、このタイプよって治療方法がかなり異なります。その癌のタイプや進み具合、そして患者ごとに最適な治療法を選択し、病が退治されます。やっかいなことに、この分類や治療の基準がしばしば微妙に変わり、皆さんが手軽に入手できる一部の不正確な情報や最新でない情報は、医師でも(癌が専門でないと)混乱するのです。つまり本やネットに出ていたとか、テレビの人がこう言ったとか、お友達はこう治したとか、あそこの病院はこうだとか、気にし過ぎないことが大事です。

 さて、一時期から乳癌は治療しないだの、癌モドキだの論争があるのはご存じでしょう。顕微鏡検査(病理検査)で癌と確定診断されたとしても、先に説明したごとく乳癌にはとても多くの種類があり、なかには長い間おとなしくしているタイプの癌が確かにあるのです。悪人(癌)のなかに凶暴な極悪人(悪性度が高い)もいれば、ヒトに危害を与えないコソ泥(悪性度が低い)もいるようなものでしょうか。この場合は癌が大きくなるとかならないとかより、癌の本体から癌細胞がほかの内臓に流れて行くか行かないか(転移するかしないか)がかなり重要で、これが命にかかわってくるポイントのひとつです。検診で早く見つかる乳癌に、まだ転移する能力を持たないタイプ(すぐには命にかかわらないタイプ)が含まれているのは事実です。乳癌と診断されたあとで大切なのは、そのタイプによって過不足のない各種検査や治療(手術・放射線治療などの局所療法や抗癌剤・抗体薬・ホルモン剤などの全身治療から検討)を適切な時期に受けることです。治療不要だの、モドキだのはやはり極論ですし、癌と診断されて治療は不要なら検診やドックそのものが不要ということになり、なによりも癌で早くに亡くなる人はずっと少ないはずですよね。癌が見つかっても、慌てずに診療計画を立ててもらうことが大事です。

 ところで、海外の美人女優さんが、乳房を予防的に切除したニュースは一段落したようです。これは目新しいことではなく、10年以上前から海外では(捏造のない)論文として治療成績が複数発表されていますが、有名人が公表するとにわかに脚光を浴びるものだと実感しました。ある異常な遺伝子が確認されると乳癌を発症する確率が高くなること、予防的に乳房を切除しても乳癌になる確率がゼロにはならないこと、などが要点です。しかし国内において、自費でこの高額な医療を受けるのは非現実的でしょう。適切な検診やドックによる早期発見でタイミングを逃さなければ、ほとんど心配には及びません。その癌検診を受ける人が増えたといわれますが、実は日本の受診率は先進国レベルとは全くいえず、対象人口の2割くらいです。いろいろな心配をするより、できれば(他人でなく)自分が信頼でき長く通える施設で検診を受診することが大事です。

 末筆ながら、皆さんの健康を祈念しております。


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