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病院広報誌

緑のひろば

2013年12月号

誤嚥性肺炎について

呼吸器内科
神山 麻恵

はじめに
 我が国の、死亡原因第3位は肺炎です。最近まで第3位は脳血管疾患でしたが、H23年に肺炎が3位になりました。これは高齢化社会が到来したことで肺炎により亡くなられる高齢者が急増した事が要因だと考えられます。
高齢者の肺炎の多くが、『誤嚥(ごえん)』といわれています(70歳以上では70%以上が、90歳以上では95%近くが誤嚥性肺炎であると言われているようです)。昨今の現状を踏まえて、H23、24年度の当院呼吸器内科に入院した肺炎患者様のうち、誤嚥性肺炎の割合を調べました。H23年度の肺炎入院延べ259名のうち、誤嚥性肺炎と診断されたのは113名、H24年度の肺炎入院延べ259名のうち、誤嚥性肺炎と診断されたのは105名でした。たった2年間の追跡では、増加の動向はつかめませんでしたが、肺炎入院数の4割強が誤嚥性肺炎とは、思いのほか多いと感じました。

特徴
 大多数は、細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎で、高齢者に多く発症します。高齢者では肺炎としての症状、すなわち熱、咳、痰といった症状に乏しく、元気がない、食欲不振、傾眠などといった症状で発症する点や、多くの高齢者が不顕性誤嚥(むせこみなどの症状がなく、知らないうちに気管や肺へ唾液が垂れこんでいる誤嚥状態で食事摂取などと関係なく、入眠中に唾液が気管や肺に垂れこんで生じます。)を伴い、いつの間にか誤嚥を繰り返しているという点も特徴的です。再発を繰り返しやすく、それにより耐性菌が発生し抗菌薬治療に抵抗性がでたり、酸素・体力状態が悪化して多くの高齢者が死亡するという経過も生じやすい肺炎です。少数ですが、一度食べた食事が胃から食道に逆流して起きることもあります。便秘や大腸ガンなどで腸の通過が悪くなって嘔吐したときに『吐瀉物(としゃぶつ)』(体外に吐き出された胃の内容物)を気管に吸い込んで起きるものです(これは高齢者に限った事ではありません)。このように、口腔内の細菌で発症する肺炎以外に、胃液や唾液などの消化液で発症する肺炎もあります。
 一般的に食事や、飲水と共に誤嚥が発生しやすいので、経口摂取が最大の誘発因子となり、そう診断された場合には一旦飲食を禁止して加療するため、体力や栄養状態の低下が著しく生じやすいです。
 脳血管障害や、パーキンソン症候群、認知症の方に多く合併します。このような疾患では、嚥下障害(喉の神経や筋肉が正常に働かないことで嚥下に障害を来たす)があり、誤嚥を起こしやすいのです。

予防法
 脳血管障害などの予防が可能であれば、それを第一とし、その他には

誤嚥のリスクを減らすこと:
・食事の工夫(食事形態やとろみをつける等の 工夫をしてみること)
・食事に集中する(会話やテレビを見ながら等 の食事をしないこと)
・胃液の逆流を防ぐ(食後2時間は横にならな  いように気をつけること)
・嚥下リハビリ(嚥下機能の改善をはかること)

感染リスクを減らすこと:
・口腔ケア(口腔内を清潔にし、誤嚥時の細菌 を少なくして肺炎の発生を減らすこと)
等があります。

最後に  当科の誤嚥性肺炎入院者の平均年齢は87歳でした。ちなみに日本の平均寿命は83歳(女性86歳、男性79歳)です。当科の誤嚥性肺炎入院者は日本の平均寿命をはるかに超えているようです。平均入院日数は33日(最長入院日数は168日)と1か月を超えていることや、医学的に食事再開が可能と判断できたのは全体の37%と大変低い数字であることが、今回振り返ってみてはっきりしました。当科では高齢者が多かった為に低値であった可能性があり、全ての誤嚥性肺炎に当てはまる数字ではないと思いますが、63%のケースで食事再開が難しいとなると、改めて大変な状況と考えさせられました。
 誤嚥性肺炎は再発が多いこと、平均1か月以上の入院で、食事摂取不可と判断されるケースが大多数ということがどれだけ高齢者にとって致命的であるかは理解の範疇です。
 予防法をいくつか挙げましたが、いずれは家族・わが身に起こる事と考えて予防に努めたいです。これをきっかけに、多くの方々が、少しでも誤嚥性肺炎を理解し、考え、その発症を防げればと願っています。


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