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病院広報誌

緑のひろば

2013年9月号

レビー小体型認知症

神経内科
稲葉 彰

 現在日本では、高齢者人口の増加に伴い、約300万人が認知症に罹患しているといわれています。レビー小体型認知症はアルツハイマー病に次いで2番目に多い認知症で全体の約20%を占めているといわれます。

レビー小体型認知症とは
 レビー小体型認知症は65歳以上の高齢者に多くみられ、男性のほうが女性より2倍多く発症します。症状の中心となるのは物忘れですが、それに加えてさまざまな症状が現れます。主なものに@「ベッドのそばに人が立ってこちらをみている」とか「庭を子供が走り回っている」などの非常にリアルな幻視が繰り返し現れる、A認知症状の変動がみられ、時間帯や日によって頭がはっきりしている時やぼーっとしている時がある、B動作が鈍くなり、四肢の震えや筋肉が固くなるなどのパーキンソン症状、があります(この3つの症状はレビー小体型認知症の診断基準の中核的症状とよばれます)。そのほかに、睡眠中に悪夢をみて大声で寝言をいったり暴れたりする(レム睡眠行動異常症)や、気分の落ち込み(抑うつ症状)や、起立時に血圧低下を来して転倒や失神を起こす(自律神経症状)などがあります。 

レビー小体型認知症の原因
 レビー小体型認知症はレビー小体という特殊なたんぱく質が大脳にたまることによって生じます。レビー小体は、αシヌクレインという特殊な蛋白質の塊のことで、最初はパーキンソン病の患者さんの脳で発見されました。その後、パーキンソン症状を伴った認知症患者さんの脳からも発見されるようになり、この病気が注目されるようになりました。脳内でレビー小体がたまる場所によりレビー小体型認知症になったりパーキンソン病になったりするため、両者を合わせて「レビー小体病」と呼びます。

レビー小体型認知症の診断
 レビー小体型認知症は、認知機能の低下のほか、前述したような特徴的な症状を診察で確認することにより診断します。そのうえで次のような画像検査を行います。
 頭部MRIは、アルツハイマー病をはじめとする他の認知症や、正常圧水頭症、パーキンソン症状を示す他の病気を区別するために行います。
 脳血流シンチグラフィは微量の放射線を放出する薬物を注射し、脳内の血流の状態を見る検査で、脳の機能が低下している部位が血流低下部位として現れます。レビー小体型認知症では、視覚を認知する後頭部での血流低下がみられることがあります。
 MIBG心筋シンチグラフィは、心臓を支配する自律神経の機能を調べる検査です。レビー小体型認知症やパーキンソン病では、レビー小体が脳のほかに心臓を支配する交感神経にも蓄積するため、発病のごく初期からこの検査で異常をきたすことが知られています。アルツハイマー病をはじめとする他の認知症を起こす病気ではほとんど異常をきたすことがないので、この検査が診断の決め手になることがあります。

レビー小体型認知症の治療
 レビー小体型認知症の治療は、認知症状、幻視や抑うつなどの精神症状、パーキンソン症状の3つの症状に対する治療に分けられます。
 現在発売されている抗認知症薬は4種類あり、いずれも適応はアルツハイマー型認知症のみで、レビー小体型認知症は保険適応になっていません。しかし、これらはレビー小体型認知症の認知症状に効果があることがわかってきています。幻視や興奮状態に対しては、前述の抗認知症薬のほか、気分を落ち着かせる漢方薬や抗精神薬が用いられます。パーキンソン症状に対してはレボドパなど通常の抗パーキンソン病薬を使用します。注意する点は、レビー小体型認知症では薬剤過敏性という特徴があり、通常使用する薬物の量以下でも過敏に反応して興奮性が増したり、副作用がでたりすることがあります。したがっていずれの薬剤もごく少量から様子を見ながら使用することが重要です。


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