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病院広報誌

緑のひろば

2013年5月号

心雑音について

小児科統括部長
香取 竜生

健診や、風邪などでお子さんを小児科に連れて行って、心雑音があると言われてびっくりしたという親御さんも多いのではと思います。心臓の病気だなんてどんなに大変なんだろうと検査の日まで心配でたまらなかったのではないでしょうか。では心雑音とは一体なんなのでしょうか。
古代エジプトや古代ギリシャでも病気になると体の音が変化することが判っていましたが、音を聞くためには、患者の裸の体に直接耳をつける必要がありました。19世紀の初めに聴診器が発明されましたが、患者がふくよかな若い女性であったため直接耳をつけるのがためらわれ、手近にあった紙で筒をつくって耳にあてたところ、かえって良く聞こえることに気付いたのがきっかけであったという話が伝わっています。初めはただの筒でしたが、やがて先端がラッパ状に拡がり、胴の部分がゴムのホースになり、19世紀の中ごろには両耳で聞く今の形の聴診器が完成しました。
白衣、耳鼻科医の額帯鏡(頭に留めた丸い鏡のことです)とならんで医師のシンボルとなっている聴診器ですが、この発明により、肺の音、心臓や血管の音、消化器の音を正確に詳細に聞くことができるようになり、医師は初めて生きている体の中で何が起きているのかを正確に知ることができるようになりました。

心臓の聴診ですが、心音と心雑音を聞き取ります。心音とは「ドッキンドッキン」という音のことです。「ドッ」をI音。「キン」をII音と言います。心臓の中を血液が一方向に流れるようにある弁(全部で4つあります)が閉じる音ですが、これが強くなったり弱くなったり「ドッドコドッドコ」や「ドコドコ」になったりすることで、心臓の状態・病気が判ります。これ以外の普通は聞こえないはずの異常な音のことを心雑音といいます。 心臓超音波検査はおろか心電図もレントゲン写真もない頃のことですから、一生懸命に様々な音が記載され分類され、実際の患者の病気との関係が分析されました。その結果、「心臓の弁や血管が狭い」「弁が壊れて血液が逆流している」「心臓の一部に穴があいていて血液がもれている」など心臓の病気があって聞こえる心雑音の性質が判ってきました。これらを「器質性心雑音」といいます。

一方、確かに雑音は聞こえるのに、病気がない場合があることも判ってきました。これが「機能性心雑音」です。同じような意味の言葉で「無害性心雑音」という言葉もありますが、いずれの場合も病気があるわけではありませんから、それ以上の検査も治療も生活の制限も不要です。実際、子供の二人に一人には心雑音が聞かれるとも言われていますので、機能性であることが明らかであるときは、親御さんにはあえて伝えないことも多いかと思います。

心雑音は変化することがありますし、また機能性なのか器質性なのか微妙な場合もあります。昔は聴診器しか診断の手段がありませんでしたが、今はいろいろな検査方法がありますから、疑わしいときは検査をしてはっきりさせることができます。心雑音を見つけた医師は、その性状だけでなく、呼吸、活気、食欲等々いろいろな症状、所見から総合的に判断します。心臓超音波検査などの検査のできる病院へ紹介される場合でも、考えられる病状の緊急性によってどれぐらいのタイミングで受診するべきかを指示されると思います。
心雑音の検査を勧められた時には、その緊急度、重要度も併せて説明を聞いておけば、過度の心配をしないで済むかもしれません。


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