- トップページ
- 病院広報誌 緑のひろば
- 2012年7月号
2012年7号
糖尿病と睡眠時無呼吸症候群
〜よく眠れていますか?〜
代謝内分泌内科 佐田 晶
糖尿病の発症予防や治療において、食事療法、運動療法はとても重要です。一方で近年、睡眠の質と量が糖尿病と深い関わりがあることもわかってきました。
夜間の睡眠が障害されると様々なホルモン分泌、自律神経機能などに異常が生じます。交感神経系の活性や、ストレスホルモンの分泌増加により、血糖や血圧の上昇、体脂肪の増加などをきたします。睡眠中に主に分泌される成長ホルモンの分泌も低下するので、筋肉が減って、脂肪が増えやすくなります。脂肪容積が増えるとインスリン抵抗性が上昇するので、糖尿病になりやすくなります。すでに糖尿病の方は糖尿病が悪化します。
睡眠が障害される代表的な病気に睡眠時無呼吸症候群という病気があります。2003年に山陽新幹線の運転手が居眠り事故を起こした問題で一躍有名となった病気といえば馴染みがあるのではないかと思います。この病気には上気道が閉塞して起こる閉塞型と気道自体が無呼吸になってしまう中枢型がありますが、糖尿病の方の睡眠時無呼吸症候群は閉塞型のことが多いので、今回は閉塞型睡眠時無呼吸症候群(以下OSAS)についてお話します。
OSASでは睡眠中に気道が閉塞し、無呼吸となるため、血液中の酸素濃度が下がります。いよいよ苦しくなって呼吸が再開されるわけですが、このときに大きないびきがみられます。OSASのご家族の方からは、突然しばらく呼吸がとまるので心配して様子をみていると、「突然大きないびきをかきはじめる。」、というようなお話をよく伺います。肥満や首が短い、顎が小さいという方は気道が狭くなるためOSASになり易いといわれていますが、中には痩せていてもOSASになる方もいらっしゃいます。
OSASで夜間睡眠中の無呼吸、低酸素があるため、深い眠りが得られず、夜中に何度も目が覚める、熟眠感がない、昼間の眠気や頭痛、倦怠感、集中力の低下などの症状がみられます。このためOSASの方は交通事故などを起こす頻度も高いと考えられています。
検査は、終夜睡眠ポリグラフィー検査という睡眠状態と呼吸状態を同時に測定する検査がありますがこれは入院が必要になります。最近では簡易睡眠ポリグラフィーという検査があり、無呼吸の頻度、長さ、いびきの回数、血中酸素濃度などを測定できます。この検査は、在宅でも検査が可能で入院する必要がありません。当院では現在この検査を行っております。
OSASの治療はまずは減量、飲酒や喫煙を控えるといったことが重要です。解剖学的に気道が狭い方は咽頭、扁桃、鼻の手術などが必要になることもあります。
内科的にはCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸法)という治療法があり、当院でもこれを行っております。CPAPは鼻マスクを介して、一定陽圧の空気を送り込み、上気道がつぶれないようにする治療法です。この治療をした多くの方に睡眠の質の向上やいびきが減った、という治療効果を実感していただいております。
日本人におけるOSASの頻度は0.5-3%程度といわれていますが、糖尿病患の方には高率に合併すると考えられています。当院に入院された糖尿病患者さんに検査を行ったところ、約70%の方にOSASが認められました。
OSASを放置すると糖尿病だけでなく、高血圧、脳卒中、心筋梗塞、突然死等の危険性が高くなります。たかがいびき、されどいびき、睡眠時無呼吸症候群は実はとても怖い病気なのです。
思い当たる節がある方は是非一度、当院を受診して下さい。検査は代謝内分泌内科、呼吸器内科等で行っております。当院の人間ドックでもオプション検査として簡易睡眠ポリグラフィーを実施しております。
睡眠時無呼吸症候群の症状
- 座日中の眠気、居眠り、だるさ
- 熟睡感がない
- 夜中に目覚める
- 夜間頻尿
- 起床時の口渇感
- 胸焼け、胃食道逆流
- 性欲の低下
眠気テスト
- 座って何かを読んでいる時 (0 1 2 3)
- 座ってテレビをみているとき (0 1 2 3)
- 会議、映画館、劇場などで静かに座っているとき (0 1 2 3)
- 乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき (0 1 2 3)
- 午後横になって休息をとっているとき (0 1 2 3)
- 座って人と話しているとき (0 1 2 3)
- 昼食をとった後(飲酒なし)、静かにすわっているとき (0 1 2 3)
- 座って手紙や書類などを書いているとき (0 1 2 3)
11点以上の方は要注意です!! | 0:眠くならない |