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病院広報誌

緑のひろば

2012年6号

気胸について

呼吸器内科 川上 真樹


気胸とは肺から空気が漏れて、胸腔にたまっている状態をいいます。空気が漏れても、肺は肋骨など胸壁(箱)の中にあるため風船のように外側に膨らむことはできません。そのかわり、肺が漏れた空気に押しつぶされて小さくなります。このように、肺から空気が漏れて肺が萎んだ状況が気胸です。気胸は、10歳代後半〜30歳代に多く、やせて胸の薄い男性に多く発生します。肺が一部、ブラと呼ばれる袋になり、ここに何かしらのきっかけで穴が開きます。交通事故で胸を打つなどの明らかな理由もなく発生するので、これを自然気胸と呼びます。自然気胸では肺に穴が開いて一時的に空気が漏れますが、多くはすぐに閉じてしまいます。漏れた空気は血液に吸収されて次第に消失します。

その他の気胸の原因としては肺気腫や肺癌のように何か肺の病気があり、これが原因となって起こるものや、交通事故で肋骨が折れて、肺を傷つけて起きる気胸(外傷性気胸)などがあります。

また、特殊な気胸として月経随伴性気胸という気胸があります。これは生理の前後に発症する気胸で、子宮内膜症が横隔膜に広がり、生理のときに横隔膜に穴が開くことにより空気が胸腔に入り気胸となる、あるいは肺に子宮内膜症があり生理に際して穴が開くことが原因であると考えられています。気胸は女性には比較的少ないので、女性が気胸を起こしたときは、月経随伴性気胸の可能性を考えておかなくてはなりません。

気胸の症状としては胸痛、呼吸困難、咳がありますが、まれに症状がないのに胸部レントゲン検査で発見されることがあります。空気が大量に漏れると、肺がしぼみ、さらに心臓を圧迫してショックになることがあります。また稀ですが、同時に左右肺の気胸を起こすと急激な呼吸困難に陥ることがあります。実際の気胸の診断は胸部レントゲン検査で行います。胸部レントゲン検査で気胸があることが診断できたら、さらに詳しい状況を知るために胸部CT検査を行う場合があります。

気胸と診断された場合、気胸の程度によって治療方法が選択されますが、外傷性など明らかな原因によるものは原因疾患の治療を優先しつつ気胸に対する治療も並行して行います。自然気胸の場合、治療は大きく分けて保存的治療と外科的治療の2つになります。

気胸の程度が軽症で症状がなければ、外来で胸部エックス線検査を行って経過観察でもかまいません。このときは安静にして穴のふさがるのを待つ形になります。また、一時的に針で胸の空気を抜く場合もあります。気胸の程度が中等症や重度のときは、入院して胸に管を入れて、管の反対側を箱に取り付けます。この管を胸腔ドレーン、箱をドレーンバッグと呼びます。この箱は、あふれ出た空気を外に排出しますが、外から空気が逆流しない仕組みになっています。管を入れたままにしておき、肺からの空気漏れがなくなったら管を抜きます。以上の治療は保存的治療と呼び、気胸の原因であるブラに対する治療は行っていません。

気胸の問題点は、再発することです。肺のブラは体質的なもので、通常一カ所ということはありません。気胸を起こしていない反対側の肺にもブラがあります。つまり、別のブラに穴が開いて気胸を再発させることも稀ではありません。あるデータでは再発率は50%以上とも言われています。再発を避けるには外科的治療、手術により原因であるブラを切除する必要があります。手術には胸腔鏡手術といって、胸に数カ所の穴を開けて行う胸腔鏡手術と、胸を開く開胸手術があります。手術を考えるのは、明らかなブラがあるとき、空気の漏れが何日も止まらないとき、肺のしぼみ方の程度が強かったときなどです。また、再発の場合は強く手術をおすすめします。現在では比較的負担の少ない胸腔鏡手術が増えていますが、開胸手術の方が気胸の再発率が低いというデータもあります。

自然気胸は体質的なもので繰り返すことが多い病気です。特に若年、痩せ形の男性で繰り返す胸痛の既往のある方は注意が必要です。


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