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病院広報誌

緑のひろば

2009年5月号

性差医療

代謝内分泌内科   宮尾 益理子


 女性は男性より長寿で、2007年の平均寿命は女性で85.99才、男性で79.19才でその差は約7年です。1947年には男性50才、女性54才でしたので、寿命の延長とともにその差はひろがっています。一方自立して生活できる期間を指す健康寿命の差は寿命の差より小さく4年程度です。その違いはどこからくるのでしょうか?

 性差医療(Gender specific medicine:GSM)とは「性差」に敏感な医療、性差を意識した医療、性差をきちんと考えた医療のことをいいます。あらゆる商品には男性用、女性用が用意されていますが、これまで医療には、産婦人科や泌尿器科などの生殖器領域以外の性差についてはあまり考えられていませんでした。疾患頻度に男女差が明らかな疾患(甲状腺疾患(女性>男性)、痛風(男性>女性)など)や、頻度は同程度の疾患でも症状、治療反応性、予後などに男女で差があることなどにつき、きちんと研究や解析をすすめていこうということです。全国各地で設置、開設された女性外来も性差医療の一つの現れで、更年期女性を中心に一般の診療では解決できなかった健康上の問題をもつ女性が多く受診しています。

 死因を男女別にみると(図1)男性の死因は悪性新生物(癌のこと)の割合が高いのに対し、女性では心疾患と脳血管疾患などの動脈硬化性疾患の割合が高く、65才の男性/女性の3大死因の割合では、悪性新生物(癌のこと)29.80%/18.98%、心疾患14.83%/19.67%、脳血管疾患12.57%/15.67%と報告されています。また、要介護状態となる基礎疾患では(図2)、男性では脳血管障害が50%以上で最も多く、女性では脳血管障害は25%程度で、認知症と骨粗鬆症による骨折がそれぞれ20%弱など多岐にわたります。性差の最大の要因は、おそらく性ホルモン(女性ホルモン;エストロゲン、男性ホルモン;テストステロン)によるもので、脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患の発症にほぼ10年の差(動脈硬化性疾患のガイドラインでは男性45歳から、女性は55歳からが危険因子)があります。これは、女性ホルモンが血管を動脈硬化から守っていることが大きな原因です。女性ホルモンの低下を来す閉経はその他にも骨粗鬆症や、認知症の進行も加速させ、女性の健康寿命低下に大きく関わっています。基礎疾患の違いは介護期間の差にもつながり、要介護者も女性が多く、介護保険利用者の70%以上が女性です。現在、あらゆる疾患のガイドライン、薬の使用法などで、性差の記載はごくわずかですが、検診システムや、診断、治療法に性差医療が実践されれば、より効率的で効果的となることが予想されます。

 そして、性差には、「セックス;生物学的な性差」と「ジェンダー:社会的な性差」があり、後者は文化や国民性にも大きく影響され、就労環境、喫煙、飲酒頻度、検診機会の差、家庭、社会生活での役割の差などは心身両面のあらゆる部分で健康に影響するため、性差医療という言葉の性差の中には、2つの性差が含まれています。

死因別死亡確率 (主要死因)

死因別死亡確率 (主要死因)



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