このページでは、Javascriptを使用しています

病気のはなし

毒薬口に苦し、良薬は口に苦くない

形成外科  浅井 智之
(緑のひろば 2014年12月号掲載)



転んだり刃物で手を切るなど怪我をした場合、みなさんはどのような対処をするでしょうか。ほとんどの方は「消毒」して、「水に濡らさない」ようにお風呂に入り、「乾かす」ように風を通すのではないでしょうか。 これらは古くから現在に至るまで医療の現場でも実際に行われている常識と思われている方法です。しかしながらこれらはすべて間違いです。それどころか決して「やってはいけない」間違った治療方法です。現在の正しい治療は、

「消毒しない」
「水と石鹸でよく洗う」
「乾かないように覆う」

です。これらを順番に説明していきたいと思います。

 まず傷のなかに細菌が増えると腫れが強くなったり膿が出たりと、いわゆる化膿した状態になってしまいます。それを防ぐために細菌を殺したいと誰もが思うでしょう。ここで図らずも登場してしまうのが消毒薬ですが、傷に消毒薬を撒いても傷に存在する細菌を殺すことはできません。細菌はバイオフィルムという生成した粘液中に隠れていて、消毒薬が細菌には届かないからです。また消毒薬で痛みを感じると殺菌効果あると考える方も多くいますが、これはまさに体が破壊された結果の痛みです。人体の細胞は細菌より遥かに弱く消毒液で簡単に死んでしまうのです。良薬口に苦しという諺もありますが、傷に消毒は苦いだけで良薬どころか毒薬なのです。

 それでは良薬は何か、細菌を減らすためにはどうしたらいいでしょうか。その答えは「水と石鹸」です。とはいっても滅菌水がないと思われたでしょうか。日本であれば水道水で充分です。多量の水道水で洗うことで、滅菌水と同等の効果があることが分かっています。また石鹸を併用することで、細菌を守っているバイオフィルムをより落としやすくなり、傷に付着した細菌をより減らすことが可能です。私たち外科医は手術前に手を洗いますが、この時も滅菌水ではなく水道水で石鹸も市販のものを使用しています。

 傷が乾燥するとどうなるでしょうか。傷からしみ出してくる液体(浸出液)は減ってきますが、これは決して傷が治癒した状態ではありません。傷が治癒するというのは傷表面の細胞が増殖し皮膚が再生されることですが、それには細胞が生きていることが最低条件となります。上述の消毒やここでの乾燥により細胞が死滅してしまうと、細胞の増殖は困難になってしまいます。また血液によって運ばれてくる再生に必要な成分も、傷が乾燥してしまうと傷に届かなくなってしまいます。すなわち傷は常に湿った状態にしておく必要があるのです。

ついついガーゼを傷に当てたくなってしまいますが、これも間違いです。ガーゼは多量の水分を吸い上げてしまい傷を乾燥させる原因になるからです。

 ではどうするか。薬局などでは創傷被覆材といわれる、傷に水分を溜め込むことができる絆創膏が売られています。やや高価なものもありますが、それ以上に効果は非常に高いです。
身近なものであれば調理用のラップで傷を覆うという方法もあります。やや野蛮なようですが、ラップ療法として確立されたものでガーゼよりは格段に早くきれいに傷を治すことが可能です。

 ここまでくると、すべてが自分の知識と正反対で受け入れ難いという方もいるでしょう。しかしながらこれらは科学的に証明された事実です。「消毒しない」、「水と石鹸でよく洗う」、「乾かさないように覆う」、これらにより傷を早くきれいに治しましょう。


診療科のご案内

形成外科



交通のご案内

今月の担当医

休診情報

公立学校共済組合の皆さんへ


採用情報

看護部Webサイト

ボランティアについて

行事・イベント

病院広報誌 緑のひろば

日本医療機能評価機構認定病院

厚生労働省臨床研修指定病院

このページのトップへ