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病気のはなし

正常圧水頭症について ―診断と治療法―

神経内科 服部 高明
(緑のひろば 2012年3月号掲載)


はじめに
わが国では、認知症患者がまもなく約250万人に迫るとされていますが、その認知症の中に、手術で治療可能な認知症があります。その一つが「正常圧水頭症」という病気です。この病気では、認知機能障害、歩行障害、尿失禁が代表的な症状で、脳では、脳室という水が溜まっている領域が拡大していますが、腰椎穿刺で測定した脳脊髄圧は200mmH 0以下と正常範囲であり、髄液短絡術(シャント手術)を行うと症状が著明に改善します。

発生機序
私たちの脳や脊髄のまわりには脳脊髄液(髄液)と呼ばれる液体がいつも流れています。髄液は、脳の中心にある脳室からしみ出し、脳と脊髄の周りをひと巡りすると、静脈に吸収されていきます。ところが、加齢とともに何らかの原因によって髄液の流れや吸収が妨げられ、脳室に髄液がたまって脳室が拡大し、正常圧水頭症といわれる病気を引き起こします。原因不明のものを特発性正常圧水頭症、原因が明らかなものを続発性正常圧水頭症と呼んでいます。続発性正常圧水頭症の原因として、くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎などが知られています。

頻度
正確な発生頻度は明らかではありませんが、認知症と診断された患者さんの5〜6%が特発性正常圧水頭症であると考えられています。好発年齢は、おおむね60歳以降であり、70歳代に多いとされています。やや男性に好発するようです。これまでの疫学的研究と日本人口の高齢化率(約22%)を用いて計算すると、低く見積もっても日本中で約31万人(人口10万人あたり約250人)の方が罹患している可能性があります。

症状
正常圧水頭症では、認知機能障害、歩行障害、尿失禁の三つが代表的な症状(三徴候)として出現する可能性があります。歩行障害では、足が上げづらくなって小股でよちよちと歩いたり、回転するときにふらついたり、うまく止まれないといった症状が現れます。三徴候が比較的短時間に出現し、悪化してきた場合には、特発性正常圧水頭症を疑う必要があります。

診断
正常圧水頭症の三徴候のいずれか一つ、あるいは複数を認めて、頭部CTやMRIで脳室の拡大が確認されれば、正常圧水頭症を疑うことになります。ただし、アルツハイマー病でも脳萎縮にともなって脳室が拡大してくるので、正常圧水頭症との区別が問題になります。そこで、腰椎穿刺により約30mlの髄液を排除して、症状が改善するかどうかを確認する検査(髄液排除試験)が行われます。髄液排除試験の後で、症状の改善がみられる場合は、シャント手術の有効率が極めて高いと考えられており、シャント手術の適応があるとされています。

治療
正常圧水頭症の治療として、髄液の流れをよくするためにシャント手術が行われます。これは、流れの悪くなった髄液通路の替わりとして、脳または腰椎から腹腔にかけてカテーテル(管)を埋め込んで、脳室に過剰にたまっていた髄液を持続的に排除することによって、脳の機能を正常化させる治療法です。このような治療により、患者さんのQOL(生活の質)が大幅に改善されるだけでなく、家族の介護も楽になるというメリットが期待できます。
ただし、正常圧水頭症も発症から長期間経過してしまうと、シャント術による治療効果が得られにくくなるとされていますので、正常圧水頭症を疑う症状があったら、なるべく早く専門医の診察を受けることが必要です。


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