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病気のはなし

蕁麻疹(じんましん)

皮膚科 日野 治子
(緑のひろば 2009年7月号掲載)


【病気の説明】
蕁麻疹とはよく聞く言葉です。皮膚の表面に出てくる症状を、実際は別の疾患でも“じんましんがでた”といって患者さまが皮膚科を受診します。それだけ蕁麻疹という言葉はよく知られていますが、本当に蕁麻疹とはどんなものなのでしょうか? 何かの原因刺激で皮膚にむくみが生じてもりあがり、非常にかゆみの強い赤い斑点ができる、これが蕁麻疹の発疹で、皮膚科では膨疹と呼びます。膨疹は数時間から1日程度で消えていきますが、また別のところに出たりもします。

なぜ膨疹ができるかというと、皮膚には肥満細胞と言う細胞があります。この細胞は刺激によってヒスタミンという物質を放出します。ヒスタミンが周囲の血管壁の受容体に作用すると、血管は拡張し、血漿が漏出して周囲がむくみます。ヒスタミンが神経末端の受容体に作用するとかゆみを覚えます。

原因刺激としてはアレルギ−性と非アレルギ−性があります。前者は薬剤、食物、植物の花粉、動物の毛などで、これらをアレルギーの元、抗原と呼びます。抗原が口から入ったり、注射や接触で体内にはいると、体内のすでに出来ている抗体と結合して、肥満細胞の表面に結びつくと細胞が刺激されてヒスタミンが放出されるのです。ところで、蕁麻疹というとすべてアレルギ−性と思われがちですが、後者の非アレルギ−性のほうが、実際はずっと多いのです。物理的原因、即ち機械的刺激による人工蕁麻疹、温度の差による寒冷蕁麻疹や温熱蕁麻疹、発汗などの刺激によるコリン性蕁麻疹、日光暴露による日光蕁麻疹、さらに血管の透過性がより高まって起こるクインケ浮腫、感染症による蕁麻疹など挙げればきりがない程です。しかし、最も多いのは原因の特定が困難な場合、すなわち原因不明の蕁麻疹です。従来からアトピー素因があったり、皮膚が過敏であったり、体質的やそのときの特殊な状況・条件で肥満細胞がヒスタミンを放出しやすい状態であったりした場合に、特定の原因なく蕁麻疹が生じてしまうのだとされています。

蕁麻疹がアレルギー性か、非アレルギー性か、またその原因を特定するにはまず、じっくり蕁麻疹がでた状況を患者さんから聞きます。その後、血液、皮膚テストなどを用います。血液では原因と推定される物質のIgE抗体量を調べます。最近は種類が増えてきましたが、すべての物質を調べられるわけではありません。一方、皮膚ではプリックテストといって、原因物質を付着させた皮膚をちょっと刺してその部位の反応を見ます。これらの血液、皮膚のテストはあくまでも疑わしい物質を推定した後におこなうもので、あらかじめ調べておく方法ではありません。

蕁麻疹のもう一つの考え方として、急性と慢性とに分類されます。前述の急激に生じる膨疹は数時間から数日続き、時には1か月程出没を繰り返すことがあります。およそ1ヶ月以内に直ってしまうものを急性蕁麻疹、それ以上継続する場合を慢性蕁麻疹といいます。慢性蕁麻疹の原因は決定できないことが多いようです。

【治療】
 蕁麻疹の治療は、原因が判明している場合はその原因を除去したり、さらされないようにすることですが、原因が不明の場合は、抗ヒスタミン薬、抗アレルギ−薬を蕁麻疹が出没しなくなるまで内服します。前者は放出されたヒスタミンが血管や神経へ結合するのを抑制します。後者は肥満細胞がヒスタミンを放出するのを抑え、かつ放出されたヒスタミンも抑制しますので、蕁麻疹が生じないようにあらかじめ内服をしておくほうがいいのです。これらの薬剤は中には眠気を催す、前立腺肥大のある高齢男性では尿閉になる、緑内障の悪化などの副作用を起こすことがあります。沢山の薬剤から最も効果があって、日常生活に適した治療薬を選び、長期間継続することがポイントです。

非常に症状が高度の場合、特に急性蕁麻疹の場合に多いのですが、アナフィラキシ−・ショックを合併したり、浮腫のために気道閉塞を起こしたりすることがあります。血管の確保、エピネフリンやステロイドを使用するなど全身管理を要することもありますので、蕁麻疹は軽視できない疾患です。



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