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病気のはなし

しなやかで、柔らかな血管を目指して〜閉塞性動脈硬化症〜

心臓血管外科 笠原 勝彦
(緑のひろば 2009年3月号掲載)


「人の生るるや柔弱、その死するや堅強。萬物草木の生ずるや柔脆、その死するや枯槁」 (人が生まれた時は柔らかいが、死ぬと堅く強ばってしまう。万物にあっても、たとえば草木が生え出た時は柔らかであるが、枯れると乾いてかさかさになってしまう。)これは老子の言葉の一節です。

さて、ヒトの心臓は毎日およそ10万回拍動し、1万4千リットルの血液を血管に送り出しています。そして心臓や血管は、酸素、栄養素、ホルモンを全身に供給し、老廃物を運び去ります。心臓から血液が流れていく血管を動脈と言い、その動脈の太いものを弾性型血管と言います。本来は弾力性に富み、柔らかなものです。この柔らかさによって、全身の隅々まで血液が流れていきます。

動脈が動脈硬化(脂肪が血管壁に蓄積すること)により弾力性を失い、特に足にいく動脈が硬く、狭くなり、最後には詰まってしまう病気が“閉塞性動脈硬化症”です。500mも歩かないうちに足のふくらはぎが張ってくる、痛む、歩けなくなる。でも、休むとまた歩けるといった典型的な症状(間歇性破行)から、足が冷たく、色が変わり、果ては血液が十分流れずに足が腐ってしまうおそろしい病です。閉塞性動脈硬化症の患者さまは、狭心症、心筋梗塞などの心臓の病や脳梗塞などを合併することも少なくありません。検査は外来で出来る上肢下肢血圧測定、CT、MRIや入院して行うカテーテルによる血管造影検査などがあります。治療は薬物治療、カテーテル治療、手術(当科が行うバイパス術)があり、動脈硬化の程度により治療を選択します。症状から思い当たる方は、一度、当科にお越しいただき、動脈硬化の程度を調べてみてはいかがでしょうか。

動脈硬化の進行を早めたり悪化させたりする原因としては、偏った食生活(肉類や油脂の過度な摂取)、喫煙、運動不足、ストレスなどがあります。

では、一度出来てしまった動脈硬化は治らないのでしょうか。近年の研究で、完全には治らないまでも、ライフスタイルを変えることで、動脈内に出来た脂肪の塊が小さくなり、安定化するということが分かってきています。

“動脈硬化”が進んでいると思う方は、

●禁煙・・・これは重要です!
●運動・・・1日30分程度が良いとされています。私の場合は犬の散歩。
●ストレスコントロール・・・趣味を持つことや、よく笑うことなど。
●食事・・・脂肪摂取を少なくし、穀物や果物、野菜などを中心に摂るようにお勧めします。

かなり進行してしまった閉塞性動脈硬化症に対しては、循環器内科と心臓血管外科が連携し、適切な治療をさせていただきます。

「柔弱なるものは生の徒なり」「柔よく剛を制す」と老子は言います。心臓血管外科専門医である私が思うに、「柔らかい血管は健康を制する」といったところではないでしょうか。
〜しなやかで、柔らかな血管を目指して〜


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