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病気のはなし

脳梗塞の超急性期治療について

神経内科 稲葉 彰
(緑のひろば 2008年12月号掲載)


はじめに

脳梗塞は、脳の血管が詰まることによって脳組織が死んでしまう病気で、死亡原因としては、がん、心筋梗塞などの心臓疾患についで3番目に多い病気です。脳梗塞の症状としては半身のまひやしびれ、失語症(うまく言葉が出てこない)など様々な症状が出現します。

現在行われている脳梗塞の治療としては、脳血栓の進行をおさえる薬(抗血小板薬、抗凝固薬)、脳細胞を障害から保護する薬、脳のむくみをとる薬を点滴したり内服し、リハビリテーションを行い機能回復を促します。しかし、いったん起こった手足の麻痺は完全に回復することは少なく、何らかの障害が残ることが多く日常生活や社会復帰にあたり支障が生じているのが現状です。

新しい超急性期治療

脳血管が詰まってしまうと脳へ行く血流が途絶え脳梗塞になるわけですが、詰まってから数時間以内に血流を再開すれば脳梗塞になるのを食い止められ、後遺症なく回復することは古くから知られていました。近年、詰まった脳血管を再開通させることができる強力な薬として遺伝子組み変え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)という薬が開発され、日本でも2005年10月より正式に厚生労働省に認可をされました。

rt-PA治療の流れ

まずこの治療を受けることができるのは脳梗塞の発症後3時間以内に限られています。ここで注意しなくてはならないのは、発症した時間とは症状が今まさに出現した時間のことで、たとえば朝目が覚めた時に症状があった場合には寝てから起きるまでの間のいつおきたのかわかりませんので、この治療法の対象とはなりません。rt-PAによる治療ができるかどうかは頭部CT検査や血液検査などを行い決定しますが、検査には少なくとも1時間はかかりますので、症状が出てから長くても1時間半くらいで病院に到着する必要があります。また症状の重症度や内服薬の種類、持病などによって、治療できるかどうかの基準が厳しく決められています。

このように、治療を開始するにあたり非常に厳しい基準が設けられているのには理由があります。まず、3時間以上経過して脳組織がすでに死んでしまっている場合には血管を再開通させたとしても症状の改善は望めないこと、また全身の状態によっては副作用として脳をはじめとする全身に出血をひき起こす可能性が高くなり、これは時に命取りになるからです。

さまざまな治療基準をクリアした場合に治療を開始するわけですが、治療は薬物を1時間くらいかけて点滴をするだけで特別な装置などは必要ありません。ただ症状や血圧などの厳重なチェックが必要なので治療後1日から2日位は集中治療室は脳卒中専門の治療室に入院する必要があります。

治療効果ですが、この治療を受けた人の約39%がほとんど症状がなくなるまで改善しており、受けなかった人に比べて約1.5倍に増えます。一方でこの治療の副作用として脳出血が約6%の人にみられ、受けなかった人に比べて10倍に上ることも注意する必要があります。

おわりに

この薬は、脳梗塞を劇的に改善させることができる治療法として注目されています。脳出血という強い副作用のため命を落とす可能性もある点で両刃の剣といえますが、適切に使用することで多くの脳梗塞発症直後の患者さんに恩恵をもたらす可能性があります。とにかく脳梗塞と思われる症状(顔面を含む半身の運動麻痺やしびれ、しゃべりにくさなど)が出現したら躊躇せずに救急車を呼んで病院に受診することが大事です。



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