このページでは、Javascriptを使用しています

病気のはなし

糖尿病:最近の話題

代謝内分泌科 水野 有三
(緑のひろば 2008年10月号掲載)


糖尿病は、平成の国民病とも言われ、患者数も増加する一方です。この「緑のひろば」で、メタボリックシンドロームを含めてこれまで3回、糖尿病を取り上げてきました。今回は、4回目ですので、糖尿病に関する比較的新しい話題を、幾つか紹介します。

【患者数は増加の一途】まずは、糖尿病の患者数がどのくらい増加してきているか、先頃厚労省から発表されました2006年11月の「国民健康・栄養調査」の結果からお話しします。それによりますと、糖尿病患者数は820万人、その予備軍は1050万人と推計され、両者で1870万人に達しました。2002年の調査では、前者は約740万人、後者は880万人、合計1620万人でしたので、4年間で250万人も増加しています。
【糖尿病になりやすい体質が見えてきた】親兄弟が糖尿病だと自分も糖尿病になりやすい・・・つまり日本人の糖尿病の約95%を占める2型糖尿病では、遺伝的体質が発症に関わっていますが、関連する特定の遺伝子がごく最近、日本人で発見されました。KCNQ1 という遺伝子のたった一カ所の塩基配列が異なるだけで、糖尿病になる確率が1.4倍になり、日本人患者の約2割の発症に関わっているそうです。近い将来、自分が糖尿病になりやすい体質か否かを調べ、早めに病気を予防する時代になりそうです。 【新しい治療方法が続々登場】近年登場してきた治療法や、登場間近の新薬を紹介します。

1) 膵島移植:膵臓のランゲルハンス島(膵島)でインスリンが殆ど作られなくなってしまった重症の1型糖尿病患者さんの治療法として我が国でも特定の大学病院などで実施可能になってきました。他人の膵島だけを移植することによって、インスリン注射が減量できたり、血糖値が安定する様になります。臓器の移植と異なり、肝臓の血管に細胞だけを注射して移植する方法で、昨年までで18人の患者さんに延べ34回の移植が行われ、順調に経過しています。

2) 新しい治療薬:ここ何年かの間に、つぎつぎと新しい種類のインスリン注射薬が開発され、多くの患者さんがその恩恵に浴しています。ごく短時間だけ作用する「超速効型」や、逆に、1日中かけてゆっくり作用する「時効型」のインスリンの登場で糖尿病の治療は大きく変わりました。飲み薬においても、食後のごく短時間だけ血糖値を下げるものや、膵臓に負担を掛けないタイプの薬が登場し、個々の患者さんに最適な薬を使い分ける様になってきました。

3) 間もなく登場する薬:インクレチンというホルモンが新しい糖尿病治療薬として今、脚光を浴びています。インクレチンは、食後に消化管から分泌され、膵臓からのインスリン分泌を助ける働きがあります。その他にも、膵島の細胞を増加させたり、食物をゆっくり消化したり、食欲を抑えたりする働きが期待されています。GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモン剤と、その分解を防ぐDPP-IV阻害剤がすでに欧米で開発されています。

以上、トピックスをいくつかご紹介しましたが、糖尿病の治療の基本は、あくまで食事や運動といった生活習慣の是正が大切であることには変わりません。


このページのトップへ