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病気のはなし

心と体の健康は心臓から

心臓血管外科 笠原 勝彦
(緑のひろば 2008年3月号掲載)


アレキシス カレル(Alexis Carrel, 1873-1944)をご存知でしょうか。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランス人の医師であり、その著書“人間 この未知なるもの”は18ヶ国語に翻訳され世界中で読まれている有名な本です。彼は世界で初めて血管縫合法を確立し、心臓移植実験や人工心臓の1号機を試作するなど心臓血管外科分野の先駆者でもありました。
カレルは著書の中で心臓と血管について次のように述べています。“人間の行動や思考の程度は、循環器官の状態に負うところが極めて大きい ”。
健全な心臓と血管により血液が良好に循環することは体の健康維持だけでなく、人の行動と考え方、生き方にまでも影響するということでしょう。
さて、心臓血管外科は文字通り、心臓および血管の病を外科的に治療します。私たちが扱う疾患は大きく分けて先天性心疾患(生まれつき心臓に奇形などの問題がある)、後天性心疾患(心臓に備わっている弁が悪くなる弁膜症、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患)、大血管疾患(大動脈瘤、解離性大動脈瘤等)、末梢血管疾患(手や足などの血管が狭くなる、または閉塞してしまう)です。
各疾患の手術法で共通している事は、心臓や血管は血液が流れているため、血流を一時遮断しなければならないことです。特に心臓内を修復する場合は人工心肺(心臓と肺の代わりとなる機械)を装着し、心筋保護液という薬を心臓に注入し心臓の動きを一時止めます。胸部大動脈瘤などの大血管疾患に至っては心臓の動きを止めるだけにとどまらず、全身の血液循環までも一時的に完全に止めてしまうこともあります。いずれの場合も血流を遮断し止めておける時間には臓器保護の点から限界があり、限られた時間内で心臓や血管の修復をしなければなりません。修復が終わったところで血流を再開します。これが心臓血管外科の手術法であり、他の科の手術とは違うところです。それ故に他の科の手術に比べると手術の危険性が高くなりますし、患者さんや、ご家族の方は恐ろしく感じるかも知れません。しかし、現在は人工心肺装置や薬剤も進歩してきています。また私たち心臓血管外科専門医が出来るだけ詳しく病状や治療方針をご説明し、治療に当たらせていただきます。
アレキシス カレルはその著書の中でこう続けています。“人間の行動はすべて、内部の環境液の物理的、科学的状態によって、究極的には心臓と動脈によって支配されている。“
心臓と血管を最良な状態に維持する。これは充実した人生を送る上での大切な条件の一つはではないでしょうか。先天性心疾患は別ですが、多くの後天性心疾患は主に動脈硬化が原因となります。ですから最近言われるメタボリックシンドロームも含めて、循環器疾患にならないように日々の生活を改善するように見直してみましょう(私の健康法は1日2食と犬の散歩を心がけています。禁煙もしました)。でも、もし心臓や血管の病になってしまったら、手術を受けていただき、再びより良い生活に復帰するためのお手伝いをさせていただきたいと思います。
心と体の健康は心臓から。皆さん心臓を大切にしましょう。


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